災害食特集

◆災害食特集:進化する商品 ローリングストックが課題

総合 2021.08.06 12272号 12面
ホームセンターでは災害食を豊富に品揃え(ユニディ常盤平店)

ホームセンターでは災害食を豊富に品揃え(ユニディ常盤平店)

 頻発する自然災害に新型ウイルス感染症の拡大も重なり、非常用災害食の進化が加速している。乾パンからはじまり、アルファ米やレトルト、缶詰と商品形態はだけでなく、内容も生命を維持するための糖質・高カロリーの商品から、食物繊維豊富な野菜加工品、食物アレルギーや高齢者、妊婦など災害弱者に対応した、特定原材料等(アレルギー物質)28品目不使用、嚥下(えんげ)困難者向けユニバーサルフード、糖質カットなど多様化し、まさに非常食と日常食の境界がなくなってきた。(佐藤路登世)

 さらに直近では、購入し備蓄するだけではなく、いかに消費するかが課題となっている。その切り口が、備蓄した食品を日常で消費しながら買い足す「ローリングストック」の発想で、賞味期限切れによる廃棄を防ぐ一方、災害の存在を常に意識し、実際食べてみることで非常時に備えることが目的だ。

 そこで、災害用アルファ米最大手の尾西食品は、備蓄・非常食の重要性を再認識するとともに、非常時にも役立つアウトドア・サバイバルスキルを身に付けることを目的に7月15日、「大学教授とサバイバルアイドルが伝授する防災と非常食」メディアセミナーをオンラインで開催し、普段に実際食べることで、災害食を身近なものとしてとらえてもらうことを狙った。

 さらにアルファー食品では、デザイン性が高いパッケージが人気TV番組で取り上げられ、注目を集めている。おしゃれな外観の災害食は「日常生活で目に入るところに置いてもらいやすく、ローリングストックが促せるのではないか」との狙いがある。

 その一方で、成長市場とにらんだ参入も相次いでいる。精米や切りもち、無菌米飯などコメ周りで存在感を高めてきたアイリスオーヤマは6月、宮城県角田工場に生産ラインを携え、「低温製法アルファ化米」を新発売した。今年に入って、レトルト・缶詰や飲料水の製造を開始する一方、燃料やLEDライトなど防災グッズも自前で揃えられる強みを生かし、セットアップ商品を9月1日の防災の日に合わせホームセンター中心に大々的にアピールする考えだ。

 ベンチャー企業も動き出した。無洗米にこんにゃく米を配合した「まんぷく健康米」を展開するCompassionは、これを一度炊き上げ急速乾燥させた、長期保存可能な非常用アルファ米「つなぐ姫」を8月24日新発売し、糖質制限向けというすき間市場を狙う。

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