海外通信 外食ビジネスの新発想(46)全米最大級のドライブイン・チェーン「ソニック・ドライブイン」
●クラシックなアメリカン・メニュー 1950年代のドライブイン・ダイナーを再生
アメリカは車社会である。大都市以外は、車がないとどこへも行けない。車が必要不可欠になると、車周辺のサービスが発達する。外食においては、ドライブスルー。最初の窓口で注文し、次の窓口で支払いを済ませて品物を受け取るのが通常のシステムだ。受け取ると速やかに出て、どこかほかの場所に移って食べなければならない。一方、ドライブインは名前が示す通り、車を所定の場所に止めてオーダーした後、乗ったまま食べる仕組みだから客側にとっては便利である。
「ソニック・ドライブイン」は、ドライブイン・チェーンの最大手だ。全米46州に3530店舗展開している。
第1号店がオープンしたのは1953年。オクラホマのショワニーという小さな町で開店した。まだ外食が特別だった時代だ。当時は、車を駐車スペースにつけると、インターコムのスピーカーを通して注文。3分以内にカーホップ(ドライブイン店で給仕をするサーバーのこと)がローラースケートで注文したものを運んでくれる仕組みだった。待っている間、スピーカーからは音楽が流れた。車のラジオ以外には何も聞けない時代だったから、さぞ先進的なシステムだったことだろう。「音速の素早いサービス」がスローガンで、店名の由来だ。
今ではスピーカーはキオスクに変わり、画面で注文するようになったが、見たところは1950年代のドライブイン・ダイナーそのものだ。もちろん、メニューもあまりにアメリカ的な典型メニュー。バーガー、ホットドッグ、チキン・ウィング、シェイクやサンデーなどを網羅している。どれもこれぞ典型というようなクラシックなアイテムばかりだ。注文後3分で用意できる迅速さにしては、メニューは幅が広く豊富だ。気楽に車で寄れることから、ドリンクのみをさっと飲んでいく人も多い。
シェイクのプレゼンテーションは、あまりにレトロ。クリームを絞った上にチェリーをのせているのである。また、コークやルートビヤー、レモネードなどのソフトドリンクには、特別な「ナゲット・アイス」を使っている。空気の含有量が多く、ドリンクが染み入りやすく、噛み砕きやすいという特徴の氷で、別名ソニック・アイスとも呼ばれ、同店のアイスには多くの愛好者がいるらしい。
ここに来れば、レトロな趣に浸りながら、堅実なアメリカン・メニューを食べることができる文字通りの「America’s Drive-in」である。「アメリカで最も愛されるレストランのブランドになること」が同チェーンのビジョンだという。
●店舗情報
「ソニック・ドライブイン」(Sonic Drive-In)