誰にも簡単、中医学のカゼ予防法 ウイルス・細菌を防ぐ免疫力「衛気」強化を

2003.12.10 101号 16面

「カゼは万病の元」といわれるように、重い病気のきっかけになることが多いことを頭においておきましょう。特に高齢者の場合は免疫力が低下しており、カゼをひきやすくなります。本格的なカゼのシーズン突入前に、誰でもできる家庭でのカゼ予防法を、中医師の張立也氏にお聞きしました。

(監修=張立也(中医師)氏)

◆どうして冬にカゼが流行るの?

カゼの原因となるウイルスや細菌が繁殖する好条件とは、低温です。また、空気が乾燥すると粘膜が荒れ、ウイルスや細菌が体内に侵入しやすくなります。一方、窓を閉め切って換気が悪くなるのも感染しやすい条件です。このように、冬はカゼのウイルスや細菌が、繁殖し感染しやすい季節なのです。

◆どうしてカゼはこわいの?

幼児と高齢者はカゼをこじらせて肺炎を起こしやすいのです。特に、脳血管障害がある場合は肺炎を起こす確率が高く、六五~八九歳では、がん、心臓病、脳血管疾患に続いて死因の四位にランクされます。カゼが原因で心臓衰弱や腎臓機能障害を起こすこともあり、そのまま寝たきりになるケースもあります。

◆カゼをひかないためには?

カゼの原因は、ウイルスや細菌の体内への侵入ですから、ウイルスを身体の中に入れない防御策をとることが一番の予防になります。

身体を家に、ウイルスや細菌をドロボーに例えてみると、ドロボーが侵入するのは窓やドアです。そこで、窓を頑丈にし、しっかりしたカギをつけて侵入を防ぎます。玄関は人の出入りがあるので攻撃を防ぎにくい場所です。中国の家では、玄関と門の間にバリアとなる屏風(びょうぶ)を立てます。この屏風は、外を通る人が直接、家に入るのを防ぐ役割を果たしています。日本の城でも、門を入るとすぐに通路を曲折させて敵が侵入しにくいようにしていますね。

外敵が侵入しやすいドアや窓にあたるのは皮膚、目、鼻、のど、気管支の粘膜で、ドロボーにあたるのがウイルスや細菌です。「衛気」とは、これらの粘膜を強化し、外敵から身体を守るため体表近くをめぐる、免疫力を持った防衛隊です。この衛気は屏風のように門番の役目を果たし、入って良いものは入れ、害になるものは攻撃して退けようとします。衛気の力が弱いと、防御ラインを破られ「発病」の段階に進んでしまいます。

◆カゼの予防処方「玉屏風散」

衛気は、生体エネルギーの一種であり、免疫力そのものです。身体の機能の衰えと衛気の衰えはつながっています。衛気を強めることは、カゼの予防だけでなく外敵に対する適応能力を維持するポイントでもあります。

中国漢方にはすぐれた門番、衛気を強化する玉屏風散という処方があります。玉(ぎょく)の屏風で風邪の侵入を防ぐという意味の処方名です。構成する生薬は衛気を強化し体表部を守る黄耆と、胃腸の働きをよくし黄耆の働きをサポートする役割を持つ白朮、侵入しようとする外敵を散らせて侵入する力を弱める働きを持つ防風という、巧妙な組み合わせで、カゼ予防薬の定番となっています。日本では飲みやすく顆粒状にした「衛益顆粒(えいえきかりゅう)」が入手できます。

予防効果が出るまでには、一般の人で二~三週間、毎年カゼをひくというような衛気の力が弱った人では一カ月ぐらいみておきましょう。衛気が強まれば、カゼに限らずさまざまな感染症や花粉症をはじめとするアレルギーにも強くなります。

◆カゼをひいてしまったら

一口に「鼻づまり」「痰」「咳」といってもさまざまなタイプがあり、その状態や体質によって処方も異なります。総合感冒薬より、カゼのタイプにあったカゼ薬を用います。また、カゼのひきはじめに、日常的な養生を工夫するとともに症状を見分けて、なるべく早くその時の症状にあった薬を服用することが大事です。カゼのような病気には、手軽に相談できる薬局・薬店をお持ちだと便利です。日本中医薬研究会事務局(電話03・3273・8891)で、近くの中国漢方に詳しいお店を紹介してくれます。

●カゼを予防する養生法

(1)生活リズムを正しく、十分な睡眠を取りましょう!

(2)身体の気を養うにはバランスの良い食事を取りましょう!

(3)室内の換気をしましょう!

(4)適度な運動で身体の防衛力を増強しましょう!

(5)ストレス解消を。リラックスして過ごしましょう!

(6)カゼをひく前にしっかり予防対策を!漢方で粘膜のバリア力を強化しましょう

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