百歳への招待「長寿の源」食材を追う:キンカン
キク(菊)とキンカン(金柑)はともに中国から伝えられたものだが、その歴史は極めて古い。このため知名度は抜群。キクは菊酒や菊花茶に利用。前者は強壮・健胃、そして抗早衰によい。この薬茶は疲労回復によい。またキンカン酒はカゼに卓効がみられる。さらに健胃整腸にも向く。手近な庶民の保健薬として愛用をおすすめする。
(食品評論家・太木光一)
キンカンはミカン科キンカン属の灌木で、果実は柑橘類の中で最も小さい。原産地は中国だが現在では世界各地で栽培されている。日本には一二世紀ごろに移入され、関東以西の暖地で食用・薬用に、また庭木としても植栽されている。
中国では正月(旧正月)を迎えるのに金橘(漢名)は欠かせない縁起もので、豊満な姿は福徳に通じ、黄色は黄金を、数多くの実は子孫繁栄を意味し、新春には一家一鉢を用意する。そのための金橘市は、南部都市では数十キロにも及ぶ。
品種として苦味の強い長キンカン、酸味の強い丸キンカン、甘味の強いネイハ(寧波)、品質の良い福州などさまざま。
キンカンの成分は一〇〇グラム当たり水分八三・一%、タンパク質〇・四%、脂質〇・六%、糖質一三・四%、繊維一・九%、灰分〇・六%。無機質ではカルシウム九〇、リン一四、鉄〇・三、カリウム二〇〇。ビタミンではB1〇・〇九、B2〇・〇五、C四三など(いずれもミリグラム)。
キンカンの果皮は糖度一九・五、(甘柿一五・五、リンゴ一三・一)と非常に甘いが酸が強いため、それほど強く感じない。ビタミンCが多く、皮の部分は七〇ミリグラムと多い。
果物として珍しくカルシウムが多く全果で九〇、果皮で一三〇ミリグラム。そしてビタミンPが多く抗カゼビタミンとしても毛細血管を守る作用がみられる。カゼがはやるとキンカンが売れ始める。また高血圧患者にも有効。このほか老人の咳にも特効がみられる。
ミカンなどは皮につや出し樹脂や防腐剤などが使用される場合もあり、皮を食べることはできない。キンカンは皮を生命とする果実で、ビタミン剤にも匹敵する薬効がある。
キンカンの利用法としてキンカン酒があげられる。このキンカン酒は、カゼによく効く。このほか胃を強くし、疲労を回復させる働きもある。カゼで体力の弱った人には即効性がある酒といえよう。
果実を洗って水けを切り、木綿針で七~八カ所刺し傷をつけるのがコツ。果実の用量は容量に対し一〇分の五~六ぐらい。砂糖は少なめに大さじ三杯ぐらい。甘味不足の時は好みに応じて適量を加える。ほぼ一カ月で飲めるようになるが熟成には三カ月以上必要とする。
爽やかな黄金色の色調となる。ビタミンC、クエン酸、リモネン、リナロール、ナリンギンを含み、新陳代謝・強壮、疲労や病後、健胃整腸、神経痛などに効果が期待される。
キンカン酒は味が良いので飲み過ぎないように。改めて卓効を見直すべき食品といえよう。