きなこ郷土料理列島縦断!! 日本代表の自然ヘルシーフードはどこでも人気者
●山形県・八幡町 「うぐいすもち」
3月3日の桃の節句に供する。
★白玉粉に水を少しずつ加え、透明な糊状になるまで中火にかける。砂糖を加え、最後に水あめを入れぎゅうひを作る。これに青きなこを混ぜ、あんを包み両端をつまんでうぐいすの形にし、もう一度青きなこをふる。
(『八幡町町民カレンダー』から)
●福島県・会津 「はっとう」
名前は「武家御法度」から。江戸時代、コメやそばは粉食とするとたくさん食べてしまうので禁止令が出たが、そばなどはこっそり食べていた。さなぶり(田植えが終わったお祝い)など、仕事の一段落時に食べた。
★そば粉ともち粉をよく練って延ばし、ひし形に切ったものをゆでてきなこをつける。
(会津高原レジャーサービスの『舘岩村郷土料理体験』参照)
「あわ入り笹巻き」
田んぼ仕事のおやつに大量に作っておく。貴重なもち米を少なくするためにあわを半量ほど混ぜた。
★乾燥保存しておいた笹をゆで戻して尖塔形に丸め、洗ったもち米とあわを詰めて形を整え、スゲ草で縛って1時間ほどゆでる。これにきなこをつけて食す。
(奥会津・昭和村の郷土料理伝承グループ『五月会』作品から)
大豆の良さはそのままに、消化も良くしたきなこは、日本の代表的自然健康食品。タンパク質、繊維質、カルシウム、鉄、カリウム、亜鉛、銅、ビタミンB1などにも恵まれている。そのきなこの全国の郷土料理を一堂に集めた。味を想像して、お気に入りが見つかったら、ぜひお試しあれ。
●徳島県・吉野川周辺 「いももち」
サツマイモを使ったいももちの正月バージョン。あんを包み、きなこをまぶすのが特徴。
★サツマイモは皮をむいてゆで、ざる上げして水分を取り、すり鉢に入れてすりこ木でつぶす。もち粉と塩を入れ練り上げ、うすい円にまとめたものを、蒸し器にふきんを敷いて重ねるように置き、蒸す。さらにすりこ木でよくついてもちの中にあんを包み形を整えて、きなこをまぶす。
(『阿波ふるさとの味』から)
●奈良県・山添村 「頭芋の雑煮」
大和の雑煮は面白い。味噌仕立ての雑煮のもちを取り出してきなこをつけて「あべかわ」のように食べるのだ。中でも圧巻がこの山添村の雑煮。人の頭になるように頭芋、豆腐は白壁の蔵、コンニャクも蔵が建つようにと四角く。丸く1年が過ごせるように餅は丸形、大根・ニンジンも輪切りに。そしてきなこの黄色はコメの豊作を願っている。
★焼いたもちと両手にあまるほどの頭芋(ヤツガシラ)・ニンジン・大根・豆腐・コンニャクを大振りのお椀に山のように盛る。味は味噌仕立て。きなこを添える。
(奈良県農業技術センター『大和の新郷土料理』から)
●広島県・美土里町 「きなこむすび」
田植え時のおやつとして食べていた伝統のきなこむすび。いまでも5月最後の日に行われる花田植えではこれを食べる。
★ご飯に梅干しや塩っぺ(細く切ったコブ)などを入れ、丸く結んで、きなこをまぶす。
写真=『中北芸能保存会』
●大分県・挟間町古野 「やせうま」
大分出身者なら、だれでも子供の頃、食べたことがあるはず。
平安の末期、藤原鶴清麿(つるきよまろ)という若君を乳母の八瀬(やせ)は、訳あっていまの古野にかくまった。ろくに食べるものもない中、八瀬は若君のためきなこの簡単なおやつを作った。その後も「八瀬、うま(いもの)じゃ」とせがむようになり、「やせうま」と呼ばれるようになった。古野ではお盆が終わって西方浄土に帰る先祖の霊が供物をくくる「ひも」としてやせうまをお供えする。
★小麦粉に少量の塩を加え、耳たぶの柔らかさになるまでこねる。ぬれふきんをかけ15分程度寝かせた後、親指大にちぎり細長く引っ張って伸ばす。生地が湯に浮き上がるまでゆでザル上げし、きなこ・砂糖をまぶす。
(資料=大分合同新聞社)