おはしで治す現代病:コレステロールの上手な摂り方 善玉も悪玉も存在しない

1996.09.10 12号 19面

コレステロール。肥満や動脈硬化など現代病のモトであり、現代人の健全な食生活を脅かすヤツとしてやたら目の敵にされている。しかし血液中のコレステロールが低すぎると、がんやうつ病が増え、逆に死亡率を高めるということをご存じだろうか。健康長寿に効果的なコレステロール摂取について、東京都老人総合研究所副所長の柴田博氏にうかがった。

Q よく、悪玉コレステロールを増やさないことが大切だと聞きますが?

A 誤解されやすいのですが、コレステロールには本来、悪玉も善玉もないのです。食事内容や運動量、ストレスなどの日常生活状況や体質により、体内のコレステロールが善玉になるか悪玉になるかが決まる。

コレステロールは脂肪の仲間なので、血液には溶けず、たんぱく質などに包まれて血液中を運ばれます。コレステロールが少なくてたんぱく質が多いものをHDL、たんぱく質が少なくてコレステロールが多いものをLDLという。HDLは血管や臓器のコレステロールを肝臓に、一方LDLは肝臓で合成されたコレステロールを組織に運んでおり、これが多すぎると血管壁にコレステロールがたまるため悪玉と呼ばれます。

しかし、実は動脈硬化の誘因となるのはLDLコレステロールのうちでも酸化などで変性されたものだけ。LDLは悪玉どころか、むしろ環境の影響によって悪役にさせられた悲劇の主人公なのです。

Q コレステロールのおもな働きはなんですか?

A 丈夫な細胞膜を作ったり脂肪の消化を助ける胆汁や副腎皮質ホルモン、性ホルモンなどの材料となるなど生命維持に欠かせぬ働きがあります。

また、コレステロールの低い人はうつ病にかかりやすく、自殺したり事故にあったりすることが多いこともわかってきた。適度のコレステロールは、バイタリティーや知・情・意を活性化させるうえで大切です。

Q では適度なコレステロールの摂り方、身体の中に悪玉をためないための摂り方とは?

Q 食品はそれぞれ身体にとって良い面と悪い面を持っています。たとえば、エビやタコはコレステロールの高い人は食べない方がよいといわれますが、魚介類に多く含まれるタウリン(アミノ酸の一種)は、肝臓でコレステロールから胆汁酸ができるのを促す作用を持っており、これが結果的には血液中のコレステロール値を下げるとも言われています。

また、緑黄色野菜に多く含まれるカロチンやビタミンC・Eは抗酸化作用の作用で動脈硬化の予防に役立つ。そして野菜や海藻、大豆や果物などに多い食物繊維は、コレステロールを吸い付けて体外に排泄する。そこで肉や卵、うなぎなどコレステロールの多い食品を食べるときは、あわせてこれらを十分に食べればよいわけです。

食品に含まれるコレステロールはそのすべてが身体に入ってそのままコレステロールになるわけではない。ですから善玉・悪玉というとらえ方をするよりも、様々な食品を食べあわせることで、コレステロールの特質を活かしながら、デメリットを抑えていくような食事のとり方をすることが望ましいでしょう。

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