センティナリアン訪問記 百歳人かく語りき:東京都・渡邊直二さん(99歳)
東京都世田谷区に住む渡邊直二さんはこの3月12日に満100歳になる。自宅の垣根に掛けている看板には「東京都公認珠算教育連盟公認」。おそらく日本で最年長のそろばん塾の先生だろう。七段の段位を持つ。
渡邊さんはもとは銀行員。東京銀行の前身の横浜正金銀行に入行した。「当時は行内でそろばんの講習会を開き、そこで後輩たちに教えていた」という。銀行の合併を重ね、後の東京三菱銀行の頭取にもそろばんを教えたという経歴だ。終戦の1945(昭和20)年に東京・高輪の寺を借りてそろばん塾を開いた。現在は週に3回ほど、近くの小学生を相手に九九を指導している。「生徒の数は減っているけれど、通ってくる子がいるかぎり、塾は続けていきたい」と目を輝かせる。
銀行マンだったから根はまじめ。しかし性格は「融通が利かない一徹者」という。鹿児島県鹿児島市の生まれ。父親も鹿児島出身で、いわゆる“薩摩っぽ”の血を引く。頑固一徹の半面、「ばかばかしいような、くだらないことが趣味」という。民謡が好きで“熱海の海岸散歩する、寛一・お宮の…”を謡いながら踊ったりする。
6歳の時に父親を失ったあとは、母の感化を受けて三味線を覚えた。「母は三味線が上手だった。それで琵琶を自分で弾くようにもなった。とにかく明るい母に育てられ、民謡も好きになってしまった」と笑う。
健康の秘けつは「毎日歩くこと」。いまも杖を使わずに1日1500歩ほど歩く。食べるものは何でも。好き嫌いはない。食事は毎食奥さんと、宅配の惣菜を囲んで食べる。
◆プロフィル
生年月日………1906(明治39)年 3月12日
出生地…………鹿児島県
血液型…………A型
現在の暮らし…自宅で奥さんと
趣味……………民謡
歩くこと、食べ物の好き嫌いがない