だから素敵! あの人のヘルシートーク:俳優・山下徹大さん

2007.02.10 139号 3面

幕末末期、遙かなる異国、イギリスに命がけで密航した5人の若者たちがいた。粗末な服に身を包み、新しい時代を切り開くために。伊藤博文、井上馨、井上勝、遠藤謹助、山尾庸三、いずれも後年、日本の歴史に偉大な足跡を残すことになる。後に「鉄道の父」と呼ばれた井上勝を演じた山下徹大さんに、撮影の裏話を聞いた。

ロンドン、ルーマニアのロケが合わせて1ヵ月くらい。撮影がない時もほとんど5人で一緒に行動してました。パブに行ってビール飲んだり。山口県の萩、下関の撮影も含めると4ヵ月、長期で旅もあって、歳の近い男ばかり、そういう意味ですごく珍しい現場でしたね。楽しかったですよ。

今回のお話の舞台は幕末末期。見つかれば死罪という密航までして、ギリギリの資金でイギリスに渡った彼らの情熱の源は何だったのか。いまの時代の僕らの感覚からすると、「死を覚悟で外国に行く」なんて想像できない。できるとしたらイラクに行くくらいだけれど、考えられる恐怖は向こうでの話です。ところがあの時代は日本人に殺されるわけで。恐ろしく縛られている世界の中で、なんとしてでもやり遂げたいという志を持ち、本気で一生懸命行動した。

英語が少しできるのが「井上勝」だけなんです。それもひどいものだったらしく、航海の目的が伝えられず、みんな水夫の修業をさせられる始末。そんな情けない状態で行って、全員がそれぞれ、いまの日本の基礎をつくるいろんなものを身につけて、帰ってきている。これはすごいことだと思う。

演じる時、シナリオや資料に書かれていない、その人の道程や行動を想像します。許される範囲でね。そうすると必然的に場面での演技が決まってくる。きっとこいつだったら…って。最終的にこういうことしてるから、若い頃はこうだろうとか。逆にここに至るまでには、例えばこういう恋愛があったんじゃないかなとか。

伝記に残る「井上勝」は、酒と鉄道をこよなく愛する熱血漢。後年はすごい熱血おやじだったらしい。下で働く人間を面接する時、いきなり自分の足を突き出して「ワラジを結べ」と。そこで素直に結んだ人は雇わず、「なぜですか」と訴えた人しか一緒に仕事をしなかった。トンネルを含む一区間の完成を日本人だけでと、こだわった工事もあったらしい。外国人技術者の手を借りなければ絶対無理と周囲が言っても、何が何でもやるのだと。言うだけでなく、設計者の自分自ら現場に行ってつるはしを握り、職人を励まして、それを実現させた。相当の自信がないとそういう行動はとれないと思います。間違っていてもいいから、すごく自信を持っているというの、大事ですね。自分とは全然違うけれど、憧れます。

そういう人物なら20歳代の頃、こんな若い男だったんじゃないかと思って、演じています。5人それぞれ、資料のたくさんある人物もいれば全くない人も。探しあって補強しあって、役作りしましたね。

◆プロフィル

やました・てつお 1975年、東京生まれ。95年、NTV「終わらない夏」で役者デビュー。映画では、石井竜也監督の「ACRI」(96年)に初主演。2003年には「花火師」で自身が監督・脚本・主演を務める。そのほか「破線のマリス」(99年)、「ゴジラ×メガギラス G消滅作戦」(00年)、「ドラック」(01年)、「RUN2U」(03年)、「丹下左膳 百万両の壺」(04年)、「蝉しぐれ」(05年)、「変身」(05年)、「手紙」(06年)など。父は俳優の加山雄三さん。

●山下さんの食日記(1)

食べることも料理もすっごい好きです。最近はまってるのが空芯菜。炒める時はフライパンに油を入れて、ニンニク、空芯菜、それに生湯葉を入れてパアーッと、とにかく速攻で炒めて食感を残します。最後に醤油とベトナムの魚醤をちょこっと。

みそ汁は意外かもしれないけれど、これが意外とうまい。ダシは普通にカツオと昆布。空芯菜は早く入れるとクタクタになっちゃうんで、味噌を入れた後に。

●山下さんの食日記(2)

ルーマニアでは「ポレンタ」がおいしかった。トウモロコシ粉を煮て牛乳、バターなどを混ぜて練り込んだもの。見かけは多少黄色みの強いマッシュポテトみたいな感じ。不思議な食感が気に入りました。シチューみたいなソースとの組み合わせでよく出てきました。

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