ザ・ニッポン地方発 甲州百匁柿(山梨県・塩山)

1996.11.10 14号 17面

フルーツ王国「甲州」はいま秋、真っ盛り。「笛吹川」のほとり、「恵林寺」の付近にはすごく大きな柿の実がなる。本当に赤ん坊の頭くらいの感じで、二~三個が枝についていると、その重みで枝が曲がってしまっている。「甲州百匁柿」と呼ばれるもので、実際に一個が一〇〇匁(約三七五g)前後あるのだという。たくさんの大きな実がたわわになる横で、皮をむいた柿が縄につながれて干されているのは表現に困るほどの景観。輪のようにつながっている柿々の作る造形美、見事な色彩の綾だ。

出来上がった干し柿はあの有名な「ころ柿」なのだそうだが、完成までにかける手間暇をうかがってびっくりした。まず収穫の時期。これを間違えると味もさることながら固さが異なるのだという。次に皮をむいてから多少の渋抜きと色付けのために硫黄で燻蒸するのだそうで、そのまた時間が微妙、過不足は厳禁の由。これを終了したものを縄に挟みこんで約三週間干すのだが、この期間の陽気がすべてを決める。

適当に陽が当たり、適度の湿り気も必要で、さらに重要なのは「空っ風」だそうだ。適当に干し上がった柿を今度はゴザの上で手で揉み、形を整えながら干し上げるのだが、この時に油断をするとあの美麗な白い粉ならぬ変なかびが生えてしまう。

こうして完成した良品が12月15~25日の短期間に一斉に出荷される。「適度」の条件で「適当」なところを見計らって完成するから、年によって出来具合も、従って値段も変わってくるという微妙な産物だ。干し柿には各種ビタミンも多く含まれていて、とくに高血圧の人にはおすすめ。

(自然食料理人・田村匡世)

◆ほし柿入り五目白和え

◇材料=ほし柿70g、にんじん50g、白こんにゃく1/3枚、干しいたけ中2枚、せり1/3束、豆腐1/3丁、白ごま1/4カップ。

◇作り方=豆腐は重石をして水を切る。ごまは炒ってよくすっておく。柿は柱をとり細かく切る。こんにゃくはゆでてから水で洗い細く切る。にんじんも長さ3センチメートルの細切りをする。干しいたけは水で戻し細く切る。にんじん、しいたけ、こんにゃくを、だし2カップ、酒大さじ2杯、砂糖大さじ1杯、塩小さじ1/2で煮て冷ましておく。せりは洗ってさっとゆでて、冷たい水で冷やし、2センチメートルの長さに切る。すり鉢に豆腐をいれてすり、ごまを加え砂糖大さじ1・5杯、塩小さじ1/4を入れ味をみてから水気を絞った具を入れあわせる。

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