だから素敵! あの人のヘルシートーク:俳優・野村祐人さん
角川春樹氏構想27年、総制作費30億円、4ヵ月にわたるオール・モンゴルロケ。日本映画史上、空前絶後のエンターテインメントが今月、登場している。主人公チンギス・ハーンの親友を演じた野村祐人さんに、撮影裏話、食事話を聞いてみよう。
モンゴルの方はとてもフレンドリーでした。とにかく力自慢をしたい皆さん。空き時間には馬の上で逆立ちしたり。僕の役「ボオルチュ」はチンギス・ハーンの親友、腹心として有名な好人物なので、みんなが話しかけてくれる。「モンゴル相撲やろう、腕相撲をやろう!」と。「いまダメ、後で」と言っちゃったもんで大変。モンゴル人スタントチーム、本業はみんな特殊部隊の兵隊さんだったんですよ。知らなかった。それを相手に腕相撲1人目、運良く負けなかったの。高度も高い中、息はハアハア。気がついたら、軍曹みたいな指揮官のもと、次の選手が列をなしていて…。日本の俳優は馬の練習とか言ってみんな逃げてるし(笑)。あちらは勝つまでやる気。2人目で「もう無理!」と降参しましたけどね。
僕らのやってることは、言ってみればモンゴル人が日本に来て坂本龍馬を演じるようなもの。そんな空気を少し感じてたのが、この腕相撲をキッカケに変わりました。「サンバイノ(こんにちは)!」というと、何百人が「ボオルチュ、サンバイノ!!」とあいさつしてくれるようになりました(笑)。
厳しい自然環境の中、騎馬の練習はある、戦闘のシーンは連続する。ちょっとした体調不良がケガにつながります。だからみんな徹底して体調管理には気をつけてきました。やはり基本は食事。日本から料理人の兄弟が来て、日本食をケータリングしてくれたのが、本当に助かった。うどん、豚汁、カレー。過酷な環境で、心と身体を癒してくれる最大のものは食事だと、つくづく思いましたね。
僕は出番のない日もなるべく現場に出るようにしてました。ある日、じゃあケータリング手伝おうかと、「きょう、僕らでお皿によそうよ」と。スタッフも疲れてるんですよ。いつものように列に並んで給仕側が役者陣だって気づかないの。「お疲れさまです~。きょうも旨いよぉ!」って声かけたら、「わぁ~!」と驚かれた(笑)。
サプライズ、もう一つやりました。日本食レストランを借りてプロデューサーをみんなでもてなそうと。若村さんがホワイトシチューとカリカリベーコンのせチンゲン菜。菊川さんが玉ネギ・マッシュルーム・ツナのサラダ。そして反町君が肉団子入りみぞれ鍋。反町君は、すっごい料理上手なんです。何これっていうくらい。僕、袴田君、平山さんはひたすらそのサポートで大根をおろすのと、肉団子を丸める係。豪勢なメニューでしたよ。そしてこの日、実は袴田君の誕生日でもあって。彼には秘密にしておいて、それも祝った。ポツッと、「この撮影が終わってほしくないよ」と、いい笑顔でしたね。
反町君と僕は役柄さながら、いつもいろんなことを相談してました。彼はすごく地道に勉強してるし、現場でみんなを見てる。その人のプラスの部分を生かすのが上手、役柄そのままです。僕はチンギス・ハーンって名プロデューサーだと思うんですよ。侵略者という見方もあるけれど、一方で、差別のない国造り、平和で文化的な時代を築くために、地の果てを目指したという見方もある。僕らはそういう方向で作品を作りました。
チンギス・ハーンは自分の出生においてネガティブな思いを持っていたけれど、それをポジティブな行動に変えていく。みんな同じだと思うんです。僕はルーマニア人のクオーターで、小さい頃、「外人」とからかわれたこともある。でもその与えられた場所でどこまで徹底して生きられるか。一生懸命生きれば逆に与えられる。そんなことを強く確認した作品でした。
役者陣みんな、家族みたいな間柄になりました。この仲間がこれから、それぞれのベースになる気がします。誰かの次の映画を観に行って、「頑張ってるな」とか、「最近、気を抜いてないか」とか、声掛け合っていくでしょうね。
◆プロフィル
のむら・ゆうじん 1972年、東京生まれ。NHKドラマスペシャル「絆」(87)で主演デビューし、昭和62年度芸術作品賞を受賞。その後、テレビドラマ「学校へ行こう!」(92・フジ)、「いつも心に太陽を」(94・TBS)、「すずらん」(99・NHK朝ドラ)、「こちら本池上署」(05・TBS)などテレビドラマに出演。映画では「800 Two Lap Runners」(94)に主演デビューし、毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人賞受賞など多数。得意の英語を生かし、若き国際派俳優として幅広く活躍中。
◆3月3日(土)全国<超拡大>ロードショー「蒼き狼 地果て海尽きるまで」