百歳への招待「長寿の源」食材を追う:「イカ」

1996.12.10 15号 14面

今回は、私たち日本人にとって大変なじみの深い、海からとれる食材を二つ。日常の食卓であまりにもポピュラーなアジとイカながら、分析してみると意外にもヘルシー度の高い食べ物という…。

(食品評論家・太木光一)

イカは世界で約五〇〇種、日本近海では一三〇種ほど知られている。寒帯から熱帯まで、浅海から四〇〇〇mの深海までと広く分布している。貝塚からも石灰質の甲が出土し、古代から食べられていた。

食用となるものは少なく、スルメイカ・コウイカ・アオリイカ・ヤリイカ・ホタルイカ・モンゴウイカ・ケンサキイカなどが代表格。ヤリイカとアオリイカは北海道南部以南、ケンサキイカは日本の中部以南の沿岸水域に生息。アオリイカ・ケンサキイカは大量に漁獲されることはないが、ヤリイカは底引き網・釣り・定置網などで大量に漁穫される。

世界で年間の漁穫量はおよそ一五〇万t、このうち八〇万tが日本で消費され、日本人ほどイカを食べる国民はない。

鮮度のよいものは刺し身、すし種に向く。アオリイカやコウイカは、刺し身にして最高級である。とくにスルメイカを細作りにして、どんぶりで食べるイカそうめんは最高の旨さである。

生食以外に天ぷら・煮つけ・焼き物・フライなどと調理範囲は広い。またイカは冷凍適性が高いため国内産の不足から、冷凍品の輸入は急増。スペイン・タイ・台湾・韓国ほか数十カ国から輸入されている。

冷凍イカはタンパク質の変化もなく、味も生のものと変らないため、年間を通して新鮮なイカと同様に賞味できる。安価で栄養価の高い食材と呼べる。

イカは外観が白く、のっぺりとして、栄養がなさそうにみえる。実はタンパク質源として極めて優秀な食品なのである。

人体に欠かせないイソロイシンなどの必須アミノ酸を全部含んでいる。栄養価を表わすタンパクスコアーで、イカ八五、牛乳八〇、牛肉七九、カツオ七〇、サバ六一‐‐などと比べても、はるかに優れ、タンパク質も良質で、脂肪のないのが特徴である。エネルギーをみても一〇〇g当たり七六Kカロリーと低い。

するめなどにしても、かめばかむほど味の出る理由は、ほかの魚に比べて、水にとける、つまり舌で味わえるエキス分が多いから。

この濃厚なうまみ成分は、タウリン・ベタイン・フロリン・トリメチルアミンオキサイドなどのうまみや甘味分である。イカ特有の臭気は、これらが熱で分解するからである。

最近、生イカにみるタウリンが話題となってきた。これは血液中のコレステロールを肝臓で分解するのを促進し、コレステロール値を下げる効果がみられるからである。つまり、コレステロールの上昇を抑えて、血圧を低くし、動脈硬化や脳梗塞を予防する作用があるのだ。またイカ墨には抗ガン物質の含まれていることも発見された。

イカの繊維は堅くてかみにくく、消化が悪いように思われるが、実験による消化率は生で八六%、煮て九〇%と、かみにくさと消化率は別のものと判明。安くて栄養豊かなイカを長寿健康食としておすすめする。

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