百歳への招待「長寿の源」食材を追う:「ニラ」

1997.01.10 16号 14面

いくら卓越した効果の長寿食といっても、あまりにも価格が高い特殊なものでは長続きはできない。今回の登場は、そんな心配は全く無用のポピュラーな食材の代表選手。カルシウムなどの栄養満点。にらとさくらえびは、日常の食生活に毎日たくさん摂っていただきたい。

(食品評論家・太木光一)

にらはユリ科の多年草で原産地は中国南部から東南アジアにかけてと考えられる。古くから日本に伝来し、漢方薬の泌尿器系疾患の薬として珍重された。また野菜として利用され、とくに野菜の種類の少なかった昔は、栽培がしやすく、栄養面でも優れ、重要な野菜とされていた。

冷涼な気候を好み、とくに寒さに強い。2月下旬から新葉が伸び始める。また暑さにも強く、夏に細い花柄の先端に美しい白い花をつけ、特有の香りとともに、花壇の縁どりとしても人気が高い。成長が早く、夏の終わりまでに数回刈り取ることができる。

種類は葉の大きな「大葉にら」、小さくて細葉の「小葉(こば)にら」とがあるが、大葉は葉の幅が一センチメートルぐらいになり、柔らかくて良質である。最近では軟化した「黄にら」や、とう立ちした花茎を利用する「花にら」も流通している

にらには独特のにら臭があり、これが魅力となって食欲を増進させる。中国料理には欠かせない食材の一つとなっている。レバーのにら炒め、鶏肉とにら炒め、卵とにら炒め、もやしとにら炒め、にら入りスープ、にら粥など、とくに人気の高いのは餃子で、日本でも全く同様である。

にらは中国で起陽草とよび、精力を増強するとして珍重される。昔の中国では元旦に、にらをはじめにんにく(大蒜)、野生のにんにく(小蒜)、あぶらな、香菜などの五辛を食べて、体内の邪気を払う風習がみられた。

成分ではビタミンAとCが抜群に多く、緑黄野菜に属し、その他〓も比較的多い。無機質ではカルシウムとカリウムが多い。Aは油と一緒に調理されると吸収率が一段と高くなる。またCも熱安定性のよいのが特徴である。

刺激成分の硫化アリルは、にんにくやねぎなどと共通のもので、生臭みを消し、ビタミン〓の吸収を非常によくする。またこの刺激によって消化液の分泌を高め、消化を助ける効用もある。硫化アリルは殺菌・殺虫の効果も高い。肉の生臭みを消すのに効果があり、餃子などには最適で、その効用はスパイスなみである。雑炊の中に入れると、ビタミンAの働きで、カゼを防ぎ身体を温める。日本ではみそ汁の実にしたり、酢みそ合え、卵とじ、雑炊、ひたし物やちり鍋などに使われているが、薬用としても価値が高い。冬場に入って強い身体づくりのためにもお勧めする。

調理法は、にら自体の味を楽しむ場合にはサッと短時間ゆでて、緑色がやや濃くなる程度に加熱すること。香りと色が身上であるから、火を通しすぎないように。油炒めなどの時は一度軽くゆでてから利用すると、香りはやわらぐ。早春のものは香気がとくに強い。

にらの旬は4~9月と長く、ビタミンや硫化アリルを多く含み、スタミナ増強や疲労回復によい。また繊維も多く、便秘にも特効がある。しかも価格も安く、長寿食にも最適である。

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