有機農産物を考える 米国の現状/日本のこれから 食品コンサルタント・岩瀬氏に聞く
日本は米国に比べて有機農産物等の規定・基準の認識が低いとされる。そこでその米国の状況をみてみたい。
有機農産物に詳しい食品コンサルタントの岩瀬重信氏に「有機農産物における米国の現状と日本のこれから」について聞いた。
厳しい認定基準
全米一の農業基地、カリフォルニア州ではオーガニック農産物と呼べるのは、農場でケミカル品(化学肥料、農薬など)を三年間以上未使用なもの。それ以外はすべてコンべンショナル(普通、慣行品)と言い、ケミカル品使用と同一に扱われます。日本の“ガイドライン”の「2」以下の農産物は認められないわけですね。
さらに、オーガニックの農耕地の周囲にはバッファーゾーン(境界線)の設置が義務づけられるなど、厳しい基準と罰則を持つものです。行政だけでなく、第三者のオーガニック食品の認定団体が検査、認定を行い認定マークを商品に表示しています。
売り場もオーガニックとコンベンショナルを区別し、オーガニック専用のプライスカードで統一されている店もありました。
生産農家にリスク多い日本の現状
さて、日本ではバブル崩壊とともに家庭回帰現象、家族団らんの夕食風景が戻ってきました。味噌、醤油の消費増加が話題になり、このころからとくに「有機農産物」も注目され始めました。生産農家も試行錯誤で有機農法を始めたため、リスクが多く高価格にせざるを得ない、手間がかかる上に一定の収穫量がない、形状も慣行品に劣ってしまう。だから専業で有機農法を始める人は現在でもまだ少数です。
しかし、昨年は秋から天候にも恵まれ、形状、品質、収穫量とも良い有機農産物ができた。ノウハウの積み重ねで農家のリスクも徐々に減り、収穫できるようになってきています。
有機農法に転換した農家のご主人が「農薬をまいた日に飲む酒はまずかった。農薬は風呂に入ったくらいじゃ落ちない。お客さまに喜んでもらう有機農法に挑戦して手間はかかるけれど、酒もご飯もおいしくなった」と言うんです。
確かに私たちは何年も慣行品を食べてきたが、今のところは何ら健康に異常はない。だけど農薬や化学肥料を使用している野菜より、有機野菜の方がより健康的満足感があること、さらにおいしいことも事実だと私は考えます。