おはしで治す現代病:「尿路結石」予防はやはり食生活
おしっこが固まって石になる。腎臓、尿管、ぼうこう、尿道にできる尿路結石は、特に働き盛りのサラリーマンに多い。小さいものでは一ミリメートル程度から、大きいものでは何と鶏卵大になるものもある。その人の体質や食生活などにより、わずか数カ月でかなり大きい結石ができることも珍しくはないという。やはり予防は日々の食生活から。杏林大学医学部泌尿器科・東原英二教授にうかがった。
Q尿管結石は、痛み止めの薬を取ろうにも、手を伸ばすこともできないほどの激しい痛みなんだとか。ほかにどんな症状があらわれますか?
A「尿管」の直径はわずか三ミリメートル。その中に腎臓から石が降りて来ると、尿の流れが阻害されて七転八倒の激痛が起こるのです。しかし、結石が同じ場所にあっても、痛みがケロリと治まることもあります。
一般に尿管より上部の「腎臓」に結石がある場合は鈍痛か無症状、尿管の下の「ぼうこう」では排尿痛や排尿困難などがあらわれます。さらにその下の「尿道」は直径一〇ミリメートルもあるのでここまでくれば自然排泄される可能性も大きくなります。
しかし痛みがとれたからといって放っておくと、やがて腎臓機能を完全に駄目にしてしまいます。また血尿が出ますが、血尿の色の濃さだけでは症状の重さ・軽さは判断できません。
Q身体の中に石ができるとは何とも不思議な現象。結石の正体とは何なのですか?
A結石の成分は、八割近くがカルシウムを含む物質です。カルシウムは単体では結晶化しないのですが、シュウ酸やリン酸などと結びつくと石化してしまうのです。骨のため、老化抑制のためにも、カルシウムをきちんととることは大切ですが、過剰にとると、尿中のカルシウム量も増え、尿路結石が発生しやすくなります。ほかにも、ビタミンCを多量に服用している人にも結石が発生しやすくなります。ビタミンCは体内で代謝されて、シュウ酸を作るからです。
ホウレン草にはシュウ酸が多量に含まれますが、ゆでればアクとして湯の中にシュウ酸が出ていくので問題はありません。
一方、卵黄・肉類など酸性の食品のとり過ぎも、尿中のカルシウムと尿酸を増やし、結石の発生を抑えるクエン酸を減らすので、結石の発生率を高めます。
Qまさに過ぎたるは及ばざるが如しですね。水分は多くとってもいいのですか?
Aサウジアラビアなどの砂漠地帯に住む人には、約一〇倍の頻度で腎臓結石ができることが報告されています。
尿量が多ければ、カルシウムやシュウ酸の濃度は薄められるので結石はできにくくなります。
とくに水分節制の必要がない人は、一日の尿量が二リットルを超える程度に水分をとりましょう。また、夕食はできるだけ早めにとる方がいいですね。
寝ている間は、尿量を減少させるため腎臓は濃縮された尿をつくります。ところが夜遅く食事をとってしまうと、それを消化吸収して尿へカルシウムを排出する作業と、濃縮した尿をつくる時間とが重なってしまうので、結石ができやすくなるのです。食塩のとりすぎにも注意しましょう。