クオリティ・オブ・ライフ応援委員会 人気高まる「ペタンク」 気分は“おフランス”
日本ではなぜか、温泉場といえば「浴衣に卓球」。ところ変わって南フランスにある世界有数のリゾート地・ニースでは、「ペタンク」というスポーツが定番。それが日本に上陸したのは昭和45年、あの映画監督の伊丹十三さんがフランスから道具を持ち帰ったのが始まりだとか。いまや高齢者をはじめ各年代層にも人気のスポーツとなり、ねんりんピックなど国内外の試合も盛んに行われている。
陽ざしがやわらぐ夕暮れ時、ニースの街角にはどこからともなく大人たちが集い、グラス片手にペタンクゲームに興じる。在日フランス人のマシューさんは「僕がペタンクを覚えたのはまだ幼い頃。観光客相手に小遣い稼ぎをするんです。一ゲーム数セントの小さな賭けをしてね。ペタンクは南フランス発祥のゲームなので、北部のパリなどから来た観光客は、ほとんどが未経験者。でもルールは簡単、技術も不要。誰でもすぐに楽しめるから観光客にも人気があるんです」。
ゲームは、ビュットというボールを、いかに的の近くに投げることができるかを競う。ビュットは、大きなパチンコ玉のようなもので、重さは約七○○gと、けっこう重い。でも、砲丸投げとは違って、遠くに飛ばす必要がないので、力は全く要らない。的にめがけてまっすぐ投げるため、手の甲を上に向けた独特なアンダースロー投法をする。
「このゲームの面白いところは、的が移動すること。ゴルフもサッカーも、めざすゴールは決められたところから動かせないけれど、ペタンクでは、投げたビュット(ボール)が的に当たって、的が動いてしまい、いきなり逆転勝ち、ということもよくあります」と東京シニアペタンク倶楽部(電話03・3408・1581)の佐伯信夫さん。
ゲートボールと違って、自分が下手でも、味方の足を引っ張る心配もない。大切なのは集中力。さらに、相手の玉を飛ばして的に近づく戦略など、知れば知るほど奥深いゲームだという。
さる5月18日に、東京都の木場公園で行われた大会では、最高年齢(八四歳)の前川たけさんが、フランス人のベテラン選手に勝った。「ゲーム自体も面白いけど、こうやってフランスの男の人や、小学生の坊やと一緒にできるのが嬉しいわね」と笑った。