百歳への招待「長寿の源」食材を追う:デーツ(ナツメヤシ)
デーツのふるさとはイラン・イラクなどの熱帯地域。プルーンは西アジア。ともにミネラルたっぷり、酵素の働きで便秘も治すヘルシー食材だ。
(食品評論家 太木光一)
デーツは五千年以上前から存在していた最も古い果実の一つ。神がアダムをつくり、アタムの助骨からイブをつくった時、残った土を固めて息を吹きかけるとデーツができたと旧約聖書に記されている。
デーツは日本ではナツメヤシと呼はれているが、この原産地はイラク・イランなど砂漠に近い乾燥した熱帯地域である。
日陰のない砂漠地帯でデーツの役割は食物としてばかりではない。その茂みはオアシスと呼ばれキャラバンの休憩地として極めて重要な役割を持っている。イラクなどアラブ地方の人々はデーツと羊肉とパンのホブサさえあれば生活ができるというほど、日常生活に欠かすことができない。
デーツは高さ二〇~三〇mに成長する。長さ五m以上の鳥の羽に似た葉を幾枚も出し美しい外観である。開花期に雨が降ると結実しない。このため東南アジア諸国ではみられない。
現在の主産地は中近東・インド・パキスタン・北アフリカ諸国で、主産地はエジプト・イラン・イラク・北アフリカ・アメリカなど。特にアメリカの生産量は急伸している。
品種は意外に多く、主食向けのでんぷんの多いデーツ、実として味の良いデーツ、乾操して糖分の多いデーツなどさまざま。外観も長め、丸形など。三~六cmと長さもマチマチ。一本の木から収穫量も一〇〇kgを超すものもみられる。
成分として、乾燥品(一〇〇g当たり)は糖質が六一%と多く次いで水分三三%、たんぼく質二%、繊維二%、灰分二%など。ミネラルではカルシウム八〇mg、鉄三・八mg、カリウム七一〇mgなど。ビタミンではA・B1・B2がみられる。二三五Kカロリーである。
プルーンと同様に日本人に不足しているカルシウム・鉄の供給源として望ましく、またカリウムも多く含まれている。中近東の人々のスタミナ維持に効果的といえよう。
特に砂漠地帯では羊肉やパンを主食とし野菜が不足する。便秘しがちな食習慣の中でデーツの食物繊維と酵素が自然の妙薬として便秘を解消する。
アメリカのヘルスショップの売れ筋をみると(1)トレイル(各種のミックス)(2)デーツ(3)プルーン(4)アプリコツト(5)バナナチップスとなっている。このことでも人気度が理解されよう。
デーツは生食や生干しもおいしいが一般的には乾換果実として流通される。砂糖原料・製菓原料・アルコール原料・ソース原料など、非常に広い用途を持つ食品である。
菓子やジャム用に使われるが、あんにすると、なつめ同様にすばらしい特性を持ち、小豆あんよりも風味が高い。あんパンや中華あんまん用にも向くデーツを刻んでパンやクッキーに入れるとレーズンにも優る味。プディングやアイスクリーム用、また蜂蜜代用のシロップにも使われる。
デーツからつくるアラックは日本の焼酎と同じで庶民の酒。すべて味が良く価格も安い。健康を守る食品の王者の貫禄を持つ。