だから素敵! あの人のヘルシートーク:女優・竹下景子さん

1997.10.10 25号 4面

この秋話題の舞台「奇想天外万事良」(きそうてんがいばんじよし)で白衣の天使役を演じる竹下景子さん。テレビの報道番組の看護婦さんの取材もすでに五年、日本の看護界の向上に大きな働きかけを続けているという評価も高い竹下さんに、舞台のエピソード、私たちの健康の応援団である看護婦さんについて思うことなどお話していただいた。

今度私の演じる四ヶ所ヨシさんという女性は実在の人物です。現在八八歳におなりですが、とても若々しい大きな大きなお母さんのような素敵な人。日本の看護医療のパイオニア的存在で、若冠二一歳で海を越えブラジルに渡る。そこから端を発して中国大陸、マカオ、フィリピンと南半球の西と東で大自然や疫病、戦禍と闘いながら看護の仕事を広めていくんですね。どんな苦難も明るく転換させる母性を持って。四方八方うまくいくという名前を自己紹介して、「私はよしよしよしのヨシさんよ、もう大丈夫」って言ってね。

戦前の時代、女性が自立するためには先生になるか、看護婦さんになるかしかなかったらしいのですが、四ケ所さんはここで迷わず看護婦を選ばれた。そして選んだ限りは自分は看護婦として生きるんだ、看護の道を歩むんだという強いプロ意識を貫いた。

男性であっても時代に立ち向かうなんていうことは難しかったでしょうに、どんな局面を迎えても自分で運命を切り開いていってしまうんです。計算づくでも何でもなくて、無我夢中でね。いつもどこかで大きな賭けをしていたと思うのですが、それを大きく実らせて花を咲かせたのはやはり努力だろうし、支える人がいたっていうことはお人柄でしょうね。

よくお医者さんは病気を診るけれど、看護婦さんは人を診るといいます。患者の側から見ると看護婦さんは忙しそうにしていてなかなか一緒にいてくれないと思う。でも実は実際接する前に、自分が受け持っている患者さんのことを考えてたくさんの時間を費やしているんですね。そういうことが出来るということは、実際に母であるなしに関わらず本当に持って生まれた母性の豊かな人たちが現場で頑張っているのだなと思います。

看護婦さんもキャリアウーマン、働く女性として見たときには私たちと同じだなと思うこともあります。私たちの場合は時間も不規則だし、仕事の内容もその時々で変わりますけれど、家庭を持って仕事をしているってくくり方をすれば、そのやりくりは付いて回りますからね。

お話を伺うと、もう結婚は敵だって言う。大体結婚を機にやめられる方が一時的に出ます。それを乗り越えても次は出産が敵になる。でもそれでも覚悟を決めて、私は仕事をしながら子供を産んで育てたいという人も、中にはいます。その場合はもう頑張っても頑張っても一人でやれることには限界がありますから、周りも巻き込んでほしいですね。

ウチの場合もどんどん周りを巻き込んで、迷惑をかけながらやってます。四ヶ所さんの情熱やパワーにはとても及ばないけれど、やはりそんな意気込みが必要です。やりたいことがあるし、何とかやれるところはお互いが協力しあってやっていきますので、よろしく--というところでしょうか。

働いているとお料理を作るのは本当に難しいですが、朝ご飯だけは毎日きちんと作るようにしています。あとは週末に時間があれば。子供は二人とも小学生の男の子。学校は給食がありますから、そのメニューを見て給食がパンだったらご飯にするとか、その逆とか。そんなに難しいことはしません。でもおみおつけは毎日飲みますね、これはパンでも。夫も子供たちも好きなんですよ。

食べ物に神経をはらうようになったのは、子供を持って良かったなって思うことの一つです。どうしても仕事中心だとあり合わせ、間に合わせでできちゃいましたけれど、子供がいれば三食誰かしらウチでとっているわけで私もその中に入りますから、食事をおろそかにしなくなりました。子供が生まれるまでの間に母親教室に入ってバランスの話を聞いたこともね。

女優として何か美容法とかやっていますかと聞かれることもありますが、私の場合は特にはないです。何より日常生活が仕事をしていく上でのベースになっている感じ。出発するのも帰ってくるのも家庭で、そこから栄養をもらっているのだなと。健康が第一ですしね。食べ物のことを含め、普通の日常が何より仕事を続ける基盤を作るような気がします。

食べ物の話といえば、家族で夏休みに沖縄の西表島に行った時、面白い経験をしました。最初ドライブインに入ってカレーを注文したら、なんかプツプツしたご飯だったんです。変だけれどこっちのカレーはこうなのかなあなんて思っていたら、普通のおかずの時もそう。島の人はあまりおコメが採れないことから白米に餅キビや粟などの雑穀を混ぜて炊いていたんですね。精製された白米を食べて、逆にカルシウムや鉄分を取らなきゃなんて私たちは言っていますけれど、粗食と言われているものの方が身体に良いって本当だなと気付いて。

あと、オオタニワタリという私たちの感覚からすると亜熱帯の観葉植物みたいな物の新芽をゆがいて食べているのも、感動しました。山菜と同じですよね。その土地の物を旬の時期に採って食べる。これが一番身体に合っているという。都会にいて季節感のない偏りがちな食生活になっていること、自然の豊かな土地に行くと気付かされます。

四ヶ所ヨシさんも食べるのが大好きな人だそうです。自分も好きだから、患者さんにもね、医療をするにはまず栄養をとらなきゃいけないって自分のお給料でなまずを買って食べさせたりして。健康も生活も仕事もやはり食べることが基盤ですね。

◆竹下景子さんのプロフィル=昭和28年名古屋市生まれ。東京女子大在学中の昭和48年、NHKのドラマ「波の塔」でデビュー。以後、テレビ、映画、舞台で活躍。夫はカメラマンの関口照生さん。現在は2人の男の子の母親。

●「奇想天外万事良」公演は、東京・新宿の東京厚生年金ホールで10月18(土)~23日(木)、大阪・近鉄劇場ホールで11月1(土)~2日(日)。問い合わせはグランクリュ(電話03・3479・8112)

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