百歳への招待「長寿の源」食材を追う:「髪菜(ファツアイ)」

1995.12.10 3号 11面

三百数十年の歴史を誇る北京同仁堂薬店で、長寿用の最高食品を尋ねた。答は黒色食品で、その代表は黒米(皇帝用)をトップに黒ごま、黒大豆・髪菜・椎茸・何首鳥(つるどくだみの根)・黒砂糖などであった。緑黄野菜も良いものであるが、黒色食品はこれに優るものであるという。本草学では補中養気(元気をわきたてる)、益血生津(内分泌を高める)、填髄充肌(脳髄を満たし肌を養う)と高い効用がたたえられ長寿食と呼んでいる。

代表的なものとして、黒ごまと髪菜を紹介しよう。

(食品評論家・太木光一)

髪菜は長い伝統を持つ中国特産の水草である。頭髪のような外観のため頭髪藻・髪藻などの呼び名を持つ。産地は中国西北部の内蒙・寧夏・青海・陜西など。これら諸州に流れる渓流に水藻として生える。

この藻自身は細長く黒緑色を呈しており、水中にある時はひとかたまりの乱髪にもみえる。それが乾燥すると、黒髪のようになる。長い間天然物として貴重視され高価であったが、人工栽培に成功し、価格も安くなってきた。

髪菜は吉祥を呼ぶ食べ物として吉祥菜の別名を持つ。特に広東人や香港では人気の高い素材となっている。

正月を迎えると発財(ファツアイ=お目出とう)の言葉が交される。本来の意味は金がたまることで、これが髪菜と同音になることから縁起がかつがれている。日本のめで鯛やよろ昆布と同じ発想である。

また新年の高級精進料理の一つである発財好市の材料でもある。

好市とは好景気のことで、春宴にのぞんで髪菜を中心とした素斉(スーツァイ=精進料理)を心から楽しむのである。

この髪菜の主成分をみると一〇〇g当たりで、タンパク質二〇三g、炭水化物五六・四gほか、ミネラルではカルシウム二五六〇ミリグラム、鉄二〇〇ミリグラムと極めて高い。タンパク質とミネラルが突出したヘルシーな食品と呼べよう。

漢方の素材として薬効が高く、味甘にして清涼。便通と利尿に卓効がみられ、化痰止咳、解毒滋補、順調理肺などに良いとしている。さらに常食すると高血圧・佝〓(くる)病・慢性気管支炎に効果があるとされる。

水藻である髪菜は海藻と同様に強力なアルカリ性食品であり、沃素も多く含んでいる。このため(1)降血圧作用(2)降血脂作用(3)抗血液凝固作用(4)補血作用‐‐などのほかに養髪作用もみられる。

髪菜は黒髪に似た黒色をしていることで、多彩料理には欠かせない。白色は大根と蓮根、紫色は紫菜と茄子、赤色はニンジンと桜桃、緑色はほうれん草など緑色野菜、黄色は金針菜と腐皮が、そして黒色では髪菜ときくらげが活躍する。

ヘルシーブームが高まる中で、髪菜は養血・減肥・降血圧に良いことで話題を呼んでいるが、とくに頭髪の薄い人・白髪の人によいと、愛用者が急増している。

さらに髪菜には一八種類の微ミネラルが含まれていることが発表され注目されてきた。

髪菜の特性はサッパリとしてかつ特有の風味がみられ、柔らかくて食べやすい。カロリーも低くまさに長寿食品の代表とも呼べよう。このため宮廷料理や精進料理、薬膳料理などにも広く採用されている。

この卓越した食材に対し地域を超えて中国全土が採用し北京・上海・四川・広東料理にもみられる。しかも、えび・鮑・魚介・肉類・鶏卵などによく合い、名物料理が生まれている。最近では点心や火鍋にも活躍している。

日本でも、高級感・ヘルシーの両方を含む注目食材として関心が持たれ始めてきた。