百歳への招待「長寿の源」食材を追う 「バナナ」微量成分の亜鉛と銅

1998.04.10 31号 14面

バナナにアボカド。フルーツでありながら、世界各所で主食代用にも用いられてきた実力派の熱帯果物だ。ともに紀元前の昔から地球に存在している。その栄養成分の中身をみていきたい。

(食品評論家 太木光一)

バナナの歴史は古い。アレキサンダー大王がインド遠征をした紀元前の時代、インダス川の上流でこれを発見しエジプトに持ち帰ったのが、移動の始まりとみられている。

このバナナの適地は南北緯度三○度以内の熱帯圏で、地球を帯状に巻いている。生産量は年間五○○○万トン前後で、主産地はインド・ブラジル・フィリピン・エクアドルほか。その約半分は生食できない料理用バナナである。

日本でいうバナナは、すべて生食用で年間一○○万トン、フィリピン・エクアドル・台湾などから輸入されている。

バナナの品種は非常に多く一三○種以上。果指の大きいものは主として料理用、また小さなものは長さ五センチほど。皮の厚い北蕉、皮の薄い小笠原、そして甘味の強いレディース・フィンガー、ラジャセレナなどさまざま。変わったものでは果皮が淡褐色のポートリコ、赤色のラモドなどがある。果肉の色は一般的に白色もしくはクリーム色が普通だが、黄色とか桃色のものもみられる。

優良な品種は風味良く収穫量も多く、輸送耐久力もあり、追熟加工の容易なことが条件として挙げられる。大きな全房になると、全長はおよそ一メートル、果段数は一六段、果指数二五○本にもなる。一本の重さを平均して一五○グラムとすると総重量は三七・五キログラムにも達する。

バナナは実を食べるだけでなく、つぼみや幹の芯を野菜として食べる。特に野生種の種のあるバナナのつぼみは美味である。バナナの花を乾かしたものも市場で販売されている。また料理用バナナは第二次大戦中、ニューギニアの自生地で日本軍の飢えを救った。肥大した擬茎の根元の内部にあるでんぷんを、食糧としたからである。現在でもアフリカ中央部では、これを食糧としている。

日本に輸入された青バナナは追熟によって果皮は黄色に変わる。この技術の良否がバナナの味に大きく影響する。

黄バナナの成分は水分でみると七五%で、みかんや梨に比べて非常に少ない。糖分は二二・六%と多い。熟成の過程ででんぷんは糖化して果糖やブドウ糖に変わる。他の果物と比べても多くて腹もちも良く、主食代わりにもされている。インドネシアなどでは、朝食にコーヒーとバナナというケースもある。特に微量成分の亜鉛と銅の多いのが目立つ。亜鉛は味覚障害や皮膚障害になるのを防ぐ。銅は貧血防止に効果的。いずれも高齢になると問題になりやすい項目である。

バナナは周年供給され、他の果物と比べて食べやすく価格も安い。皮もむきやすく、しかも種子がない。甘味の点からも女性や子供にも好かれている。

糖分はブドウ糖で消化しやすく、エネルギーの点で可食部一○○グラム当たりで八七キロカロリーと高い。病人やお年寄りにも良く、離乳食にも用いられている。一度に食べる量も多いのでビタミンAやCの給源ともなる。利用範囲もジュース・サラダ・フリッターなどと広い。

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