“ワールドカップな食卓”世界の強豪達は・・・アルゼンチン
どんなものを食べているのかが分かれば自ずとライバルの素顔が見えてくるはず。こうやって眺めてみるとHグループのチームは日本も含めて地球上のあちらこちらに散らばっていて、人種もさまざま。お肉大好き民族から魚介類党、小麦粉圏からコメ食い派まで、バラエティーに富んでいる。それではそれぞれのもっともポピュラーな食卓をのぞきに行ってみたい。
まずは予選第一戦。14日、トゥールーズで開催されるのがアルゼンチン戦だ。
日本の夏の季節が冬、時差はちょうど一二時間。地球儀を見ても分かる通り、アルゼンチンは日本からもっとも距離が遠い所にある連邦共和国だ。人種構成はイタリアやスペインなどから移住したヨーロッパ系が九五%とほとんど。このためこの国は「ラテンアメリカのヨーロッパ」、首都のブエノスアイレスは「南米のパリ」と呼ばれている。その他はヨーロッパ系の移民と原住民の混血のメスティソなど。
気候は国土が南北に長いため、亜熱帯、温帯、乾燥帯、寒帯の四つのエリアを持つが、全体から眺めるとその五割以上が温帯の牧草地。見渡す限りの大草原、パンパは牛肉と小麦、トウモロコシの計り知れない富を生み出す。
アルゼンチンでは人口の一・五倍もの肉牛が飼われている。半分は冷凍され輸出に回るが、残りの半分はこの国の住人の「主食」となる。どこの家庭でも食生活の中心は牛肉だ。“牧草だけしか食べないので他国より味がいい”とされる牛肉をアルゼンチン人は脳味噌から心臓、血の塊まであますところなく食べてしまう。
もっとも代表的な料理は分厚く切った塊の肉を炭火で豪快に焼くアサード。一軒家のほとんどの家は庭の隅に専用の炉を持っており、週末など人が集まる折には、必ず一時間以上かけた炭火焼きが始まる。これは男の作業で女性は食べるだけ、主婦がラクをできる料理なのだ。焼く肉には内臓部も必ず含まれ、味付けにはニンニク、コショウ、オレガノ、レモン汁を混ぜ合わせたものが使われる。
アサードはもともとメスティソの牧夫、ガウチョの料理。その昔ガウチョたちはアサードとマテ茶というお茶だけで何日も牛や馬を追い移動したという。マテ茶は非常にビタミンCが豊富で、肉との相性がよく脂分を分解する。手の平に収まる小さな器に茶葉を入れて砂糖とお湯を注ぎ、銀製のストローで回し飲みをする。いまでもアルゼンチンの家庭ではマテ茶は日常的に飲まれている。アサードの食卓にはこのほか赤のアルゼンチンワインにソーダ水を入れたお酒が合わされる。
アサードも魅力的だが日本の台所で行うには少々無理があるので、ここではもう一つの当地の代表料理、エン・パナーダという小さなミートパイの作り方を紹介したい。これはスペインから伝えられたものという。牛肉を炒める時にブドウの種から取った油、グレープシードオイルを使うこと、レーズンを入れることが特徴だ。
■アルゼンチン食講評
魚はほとんど食べないなど肉食への偏りは百歳元気的には気になるところ。スポーツ選手の筋肉組織構成には役立つか。
瞬発力九○点
持久力七○点
細胞いきいき元気力五○点
*せっかくなのでそれぞれの食事内容のヘルシー度とそれから判定したスポーツマンの基本的能力の点数を、ちょっとつけてみた。しかしこれはあくまでも一般的傾向のお話でかなりの部分お遊びです、念のため。なお、レシピは日本でも作りやすいよう、またなるべくヘルシーメニューになるようアレンジを加えてある。
◇エン・パナーダ(20個分)
〈材料〉
牛ひき肉300g、玉ネギ1個、固ゆで卵2個、オリーブの実8個、ニンニク1片、干しブドウ1/2カップ、グレープシードオイル大さじ1、ケチャップ大さじ3、塩、コショウ、オールスパイス適量、卵1個、パイ生地の材料(小麦粉31/2カップ、卵1個、グレープシードオイル大さじ3、水120cc、塩小さじ1/2)。
〈作り方〉
(1)ボウルに生地の材料を入れてよくこね、丸くまとめてラップをかけ2時間ほどねかす
(2)ニンニク、玉ネギはみじん切り、固ゆで卵、オリーブは粗いみじん切りにし、干しブドウは水で戻しておく
(3)フライパンにグレープシードオイルを入れ、ニンニクのみじん切りを炒めて香りを出し、玉ネギを加えてすきとおるまで炒める
(4)、(3)に牛ひき肉を入れる。肉に火が通ったらケチャップ、塩、オールスパイス、コショウを入れて味を整え、オリーブ、固ゆで卵、干しブドウを入れて軽く炒め、火を止める。冷めてから冷蔵庫で冷やす
(5)、(1)をめん棒で3mmほどの厚さに薄く広げてのばし、直径10cm強の円形にする
(6)、(5)の生地に(4)の具を乗せ、柏餅状に折る。ふちを水でしめらせ、指でしっかり押し合わせ、ねじるようにして形よく閉じる
(7)水をとき卵に少量加え混ぜ合わせた液に(6)をくぐらせオーブン皿に並べる。180℃に温めたオーブンで30分程度焼く。