スポーツ吹き矢健康法誕生物語、日本スポーツ吹き矢協会・青柳会長に聞く
「吹矢」という新しいスポーツが健康に強い関心を示す人たちの間でにわかに流行(はや)りはじめている。いったい、いつこの動きは起こったのか。日本スポーツ吹矢協会(東京都中央区銀座3‐8‐12、大広朝日ビル五階 Tel03・3564・5770)の青柳清会長にいきさつを聞いた。
青柳会長が吹矢というものの存在を知り、日常生活に取り入れたのはすでに四年前のことという。
「私自身、健康には気を遣う方で、中国は杭州の療養院に勉強に行ったりしていました。そこでの気功の勉強を通じて腹式呼吸が大変身体にいいということが分かりました。これは続けたいものだと喜んで帰ってきたのですが、日本に戻ると三日くらいしか継続しない。なんでだろうと考えに考えて結論として分かったのはつまらないからだと」。
確かにただの腹式呼吸の実践では、よほどの強い意志がないと生活の中で続けていくのは難しいだろう。「ちょうどその頃、吹矢の存在を知って。実際にやってみて、中国で学んできた腹式呼吸の理論と全く同じであることに驚きました。これはいい健康法の材料になると思った」。
青柳さんが“健康法のいい材料になる”と発見した頃、吹矢が狩猟の道具として使われているマレーシアのボルネオまで行ってこれを学んできた仲間がいた。「彼はこれは面白いから絶対スポーツになると考えた。この人はお医者さんで健康上の効果も折り紙をつけてくれました」。二人のサプライズを合わせて“スポーツ吹矢健康法”という言葉ができた。
それからどんどん同好の士が増えて去年の暮れ、「ここらで少し、腕試しをしてみたい」という声が皆から上がったのが、協会ができたキッカケだ。道具も自分で手作りしたり、アメリカから通信販売されているものを取り寄せたり銘々工夫していたが、統一された。東京・銀座四丁目交差点近くにあるロケーションのいい青柳さんの会社が入っているビルの五階に吹矢道場も作られた。
「あれよ、あれよという感じでした。4月に開催した第一回競技大会には老若男女たくさんの選手が参加して。車椅子で参加した下半身の不自由な選手もいました」。競技の結果はどうだったかというと、これが面白い。スポーツというからには力のある若い選手が勝ち進んだのかというとそうではない。一位は六六歳の男性、二位は五一歳の男性、三位は二六歳の女性で、優勝候補と目されていた大学に吹矢クラブを作ろうとしていたくらい意欲的な二〇歳の男性は、予想に反して予選落ちとなった。年齢や男女差が技量の熟達に影響しないスポーツという、協会が提唱していた概念がまともに証明された格好だ。
6月には大阪支部も結成。相撲の九重部屋の道場がその本拠地となった。「聞いてみたら当たり前の話なのですが、相撲道場というのはシーズン中以外は使われていないんですね。それで、二毛作で使っていいと」。
全国からのぜひ始めてみたいという問い合わせも相次いでいる。「カラオケ教室から腹式呼吸を教えるための手ほどきに使いたいとか、塾の先生が生徒の集中力を上げるために取り組みたいとか。八丈島のレジャー施設からは船が欠航になった時のお客の格好の気晴らしになるからと導入の申し出がありました」。病人がベッドのリクライニングを起こして練習用の短い吹矢で遊びながらリハビリしているという例も報告されている。
「ポイントはいつでもどこでも誰でもできるという気軽さながら、ゲーム性や技術の向上性はちゃんとあるのでやっているうちに夢中になってしまうこと。それで知らない間に健康も得られる。この三つの要素が広がりの理由でしょうか」。
夏以降、銀座の道場はさらに拡大し、ビリヤードのプールバーのようにお酒を飲みながら吹矢が楽しめるスペースも登場する予定だ。「若い人が訪れるデートスポットみたいな場所になればと。素晴らしい要素がいっぱいある吹矢ですから、たくさんの人に知っていただきたいですね」。