百歳への招待「長寿の源」食材を追う 「切り干し大根」薬より優れた栄養食品

1998.08.10 35号 20面

ふ・ごま・納豆など日本在来の伝統食品には健康食品・長寿食品と呼ぶにふさわしいものが多い。今回はこの仲間から切干し大根とゆばを紹介する。

(食品評論家・太木光一)

切干し大根はタンパク・食物繊維・カルシウム・鉄・ビタミンB1・B2・Cなどに恵まれて、へたな薬を飲むよりもはるかに優れた栄養食品で、しかも無添加・無着色の自然食品なのである。

切干し大根は江戸時代から流通をみていた乾物である。尾張ものと呼ばれ名古屋地方の名産であった。明治に入ると関東地方は千葉産が、関西地方では名古屋産が多くなり、最近では宮崎産が多く出回るように変わった。

関東地方では切干し大根、関西地方では千切りと呼んでいる。この加工用の大根は非常に品種の多い中で宮重大根と呼ばれるものが使われている。明治三十年ごろ尾張から宮崎県に移植されて主産地となった。

生大根は乾かすことによって性質が一変する。生大根の水分は九四・五%と多く一八キロカロリーであるが、乾物では水分が五分の一に減って、エネルギーの面では一五・八倍も多くなる。

天日による乾燥であるからビタミンDも多い。特に繊維が急増する。

食物繊維の研究は世界的に発達して成人病に対し特効のあることが判明し一躍して時代の寵児となった。

すなわち、動脈硬化・大腸ガン・糖尿病・肥満・胆石・ヘルニア・便秘・痔・虫垂炎・高血圧・心臓病・静脈瘤などの諸病に良いことが証明され、一石二鳥ではなく一石十鳥の食品として浮上。

アメリカの日常の食生活は肉を多食し食物繊維が全くなく、肥満や大腸ガンに悩まされている。切干し大根のように優れた食品がないからである。

また切干し大根はカルシウムの多い点でも注目される。一〇〇グラム当たり四七〇ミリグラムと多く野菜の仲間ではごま・凍豆腐と並んでベストスリーに入っている。鉄分も多く、ゆばと双壁である。ビタミンB1・B2にも恵まれ割高なヘルスフードよりも優れた食品と呼べよう。

切干し大根は乾物として周年出回っているが、このもどし方は十分ひたるぐらいの量のぬるま湯につけ、もみ洗いして汚れを取りよく絞る。さらにたっぷりの湯で、しんなりとするぐらい茹でてもどす。

もどし過ぎると歯応えがなくなるので少し堅めに茹でて日向臭さも完全に取りさること。煮物の場合は、最初ダシで柔らかく煮てから調味料を加えゆっくりと煮含めるように。

この時油揚げを千切りにして一緒に煮てもよい。またブリのアラなどは相性のよいもので炊き合わせにしてもよい。

漬け物の場合はみりんと酢を同量に混ぜ少量の塩としょう油を加えた調味料に浸して出来上がり。このほか酢の物やごま和えにも向く。

最近、スーパーなどでは野菜の中でも売れ筋になっているが特に惣菜としての煮物は人気が高い。価格も安く素朴な味でさらにヘルシー食品とあって、今後も見直し人気が続く。

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