紫なる癒し プルーン、ナスのアントシアニンは身体のサビを防ぐ

1998.09.10 36号 8面

四季折々の自然の変化を身近に感じて暮らしている私たち。その風情を食膳にも持ち込んで、器とともに目で見て楽しむ日本の食文化が培われてきた。そういった意識は私たちの記憶色ともいうべき食べ物の固有色が反映している。

秋といえば、紫。旬を迎えるナスやブドウの深い紫から、アケビの藤色などなど。紫は古来から高貴な色と珍重された。また最近では、イライラを解消するなどの心理効果(カラーセラピー)もよく知られる。さらにナスや、プルーンなどに含まれる紫の色素・アントシアニンは、ガンの原因となる活性酸素の働きを抑える効果を持つという。紫パワーを知って秋を素敵に迎えよう。

紫は、精神のイライラを落ち着ける効果がある色。この色を見ると、心の疲れが和らぎ、ゆったり落ち着いた気分になれる。

また、紫はブルー系の色でもあるので、食欲を抑える効果も。ダイエット中の人は、食器やクロスに使ったり、食卓にコスモスやキキョウなど紫の草花を飾ってみるなど、うまく利用したい。

ストレスがたまっているときは、身の周りのものに紫を取り入れるばかりでなく、紫の食べ物、たとえばブドウやブルーベリー、プルーンなどを積極的にとると心も身体もやすらぐ。

紫外線の毒は、やはり紫が消す

●酸化のメカニズムのおさらい

夏の日焼けによるシミなど活性酸素の魔の手は、肌だけでなく内臓にも及んでいる。コレステロールを酸化させ、血管壁にこびりつかせて動脈硬化を引き起こすのも活性酸素だし、ガンを含めたほとんどすべての病気に活性酸素がかかわっていると考えられる。

呼吸によって、身体に入った酸素のうち約二%は、活性酸素に変化して細胞組織を酸化させる。体内には、酸化を防ぐためのシステムもあるが、ストレスや紫外線などで活性酸素はいくらでも新たに発生する。

そこで必要となるのが活性酸素の活動を抑制する抗酸化物質を積極的に体内に摂取すること。抗酸化物質には、ビタミンCやベータカロチン・ポリフェノールなどがある。赤ワインに含まれることで有名なポリフェノールは植物に含まれる成分で、なかでも紫の色素アントシアニンは、強力な抗酸化作用を持つことがわかった。研究を世界的に広めた、名古屋大学農学部の大澤俊彦教授に聞いた。

「コメも、もともと熱帯育ちの野生種は赤や黒といった色のついたものでした。実験で黒米・赤米・白米を室温に置いておくと、たとえば日本人が食べている白米は、モミを除いた状態で室温で一年置くと、発芽率はほぼ〇%になります。ところがインディカ米、野生種の色の濃いインド米は、一年置いても発芽率は八〇%くらいを保ちます。インド米には抗酸化成分がたくさん含まれているからなのです。野生の種子は自分の体を守るために色素を本来持っていたんです。それを人間の都合で、えぐみの少ないものを作り出し食べるようになった。これはコメに限らずです。

また、色は紫だけでなく、ウコンの黄色なども同等の力を持っています。これまで植物の色素は『非栄養素』といわれ、あまり研究が行われませんでしたが、人間が取り去ろうとした計り知れない生命力が宿っているのです」。

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