おはしで防ぐ現代病 「腎」の働きを高める
「オシッコが出ない…」。身体の中の老廃物をろ過して尿として送りだす腎臓。この大切な腎臓の働きが弱まると、体内に老廃物がまん延し、むくみが起きたり、目、心臓など全身に故障を引き起こす。東洋医学では、腎は“生命力の貯蔵庫”といわれるほど大切な臓器。腎の働きが低下、つまり生命力が低下した状態を「腎虚証」と呼ぶ。腎の働きを高める漢方薬や食べ物について、日本医科大学付属病院東洋医学科講師の三浦於菟氏に聞いた。
Q:腎の働きが低下するとどんな症状が現れますか。
A:腎は身体の水分をコントロールする臓器ともいえ、この作用が低下すれば、余分な水分がたまる(浮腫)、尿が漏れる、排尿が困難になるなどが出現します。よくお年寄りで起こる夜間尿や排尿困難などの症状は、生命力を蓄えている腎の作用が低下し、パワーが落ちたために、尿の調節もうまくいかなくなった結果なのです。
腎の働きの低下は生命力の低下、つまり老人のようになる訳です。骨や歯がもろくなり、髪の変化が出現し、耳が聞こえない。そして身体に自信がなくなれば、引っ込み思案(志の低下)になります。逆に言えば、あふれる生命力は向上心を起こし“志”の基盤となるのです。
Q:治療法は?
A:腎虚証の治療は、腎の精を力づける精力剤の投与です。精力剤というと、とかく生殖能力を高める薬と誤解されますが、本来は生命力を高める薬のことであり、その中に生殖能力も含まれる訳です。ですから生まれつき喘息気味で風邪をひきやすいという子供の治療にも、身体が弱り夜間尿が気になるという老人にも、同じ薬が出されるケースもあります(腎精の不足を補う「六味丸」など)。
身体がとてもだるく、食欲もなく、下痢を繰り返すという場合にも、消化機能を高める「補中益気湯」とともに、腎の作用を高める「八味丸」をあわせて処方する時もあります。これは消化機能が衰えたためにエネルギーが作り出せない状態に加え、身体全体の生命力の低下、つまり腎の精も低下していると考えられるためです。また食べ物では、蓮の実やクコの実などが腎の働きを高める効果をもっています。