百歳への招待「長寿の源」食材を追う=「イチョウ葉」ボケ、動脈硬化予防
イチョウ茶・よもぎ茶は作るのに手軽で安価。そして薬効は大きい。ともに老化防止に効果的で、これからの高齢化時代には最適の飲料と呼べよう。
(食品評論家・太木光一)
イチョウは街路樹や寺社などに植えられ、秋に葉が美しく黄葉し、種子(銀杏)が食べられるので知られている。車の排気ガスの中でもたくましく生き、その生命力の強さには感服する。
イチョウ科は一科一属の植物で中世代ジュラ紀(約二億年前)に全盛を極め、一五種類のイチョウがみられたが氷河期の到来で現在の一種のみが生き残り、生きた化石の別名を持つ。
一九六〇年頃からドイツではイチョウの葉のエキスの研究が進められた。日本から輸入したイチョウ緑素から有効成分が抽出され、医薬品として人気を呼んでいる。
ドイツの臨床データによるとイチョウ葉エキスは末梢血管流改善作用があり、特に大脳の血流障害や脳動脈硬化に効果がみられる。別の表現をすればボケなどの老人病に対し有効なことが判明した。
この物質はフラボノイドと呼ばれ、植物中に広く分布し四〇〇〇種以上が発見されている。イチョウの葉にも一〇種以上が含まれている。
ドイツのある薬品会社はハイデルベルヒ大学と共同研究し、ケルセチン・ケンフェロール・イソラムネチンの三つの物質を主成分とするエキスを開発した。薬理・臨床の各試験で血管性疾患に極めて有効であることが確認され、生薬製材として発売。フランスでも販売されている。
いよいよ高齢化社会に突入した日本にとってボケ対策は重要課題である。ドイツやフランスではイチョウ薬品の市場規模は数百億円に達しているという。
さらにイチョウ葉から三種のフラボン配糖体ならびにバイオフラボンを発見。動物実験によると細胞に障害を与えることなく活性酸素をとらえて無毒化にするという。この活性酸素が老化を促進する元凶ともみられている。
イチョウ葉エキスの有効性は、ボケ防止・老化防止にとって極めて効果的と判明した。中国では強壮・長寿の民間薬として理解され、皮膚の保湿・美容効果の面でも優れていることが判明してきた。また高齢者の情緒不安定を始め、糖尿病・難聴にも良いとされてきた。
最も手軽なのはイチョウ葉茶を作ることである。葉を8~9月のうちに採取して天日に十分に乾燥させてから、細かく刻んで緑茶サイズにし密封保存する。乾燥葉はあまり縮むことはない。
入れる場合、土瓶にコップ一杯の水を入れ、大さじ一の茶葉を五~六分煮出せばできあがり。紅茶と番茶の中間の色合いで、わずかに苦みが感じられるが、クセは全くない。ドイツではティーバッグスタイルで販売されている。
茶葉の成分にはフラボノイド成分が含まれ、血管の内皮細胞を健全にする働きがあるほか、血液の粘り気が強くなるのを抑制する作用もみられ、動脈硬化を予防する。
最近では、化粧品メーカーからイチョウ葉エキスが入浴剤に使われ手足の冷え・腰痛に良いと宣伝されている。たくましく生きるイチョウには神秘の力があると言えよう。