Mr.&Ms.働き盛りは遊び上手 日本スキー教師協会・米沢文雄幹事長

1996.01.10 4号 17面

ウインターバケーションたけなわの季節だ。このシーズンの遊びの花形といえばスキー。一般には若者たち専売特許のレジャーと思われがちだが、一五年前、NHK趣味講座「ベストスキー」の講師として登場したことで有名なSAJ日本スキー教師協会幹事長の平沢文雄氏は、「スキーほど中高年に最適のスポーツはない」と断言。来シーズンには「いくつになっても楽しいスキー」がテーマのTV番組をスタートさせるそうだ。

どうしてスキーが中高年層にピッタリのスポーツなのかって? その理由はたくさんありますよ。スキーというのは他のスポーツに比べてかなり特種な要素があるんです。一般にスポーツにはどうしても人と競い合う部分がある。そうなるとストレスがたまったり大きなケガを招いたりする。こういう要素は中高年層にとってマイナスです。

スキーにも競技の世界はありますが、それに取組んでいるのはごく一部の人たちです。九〇%以上のスキーヤーはホビースポーツとして自分が楽しむためにゲレンデにやってきています。自分の好きな時に好きなゲレンデにやってきて好きな人と好きなコースを好きな格好で滑り降りる。これがスキーのいいところです。ペアとかチームとかの人に気がねせず、たった一人で楽しむこともできる。

こんなにも自由度が大きい一方で、逆に何歳になっても上達できる要素があることも見逃せません。一般に人間の老化は一八歳から始まるといいます。だから自分の筋肉、体力のみを使って行うスポーツは残念ながら若い身体にはかないません。ところが、スキーは上から下への重力のエネルギーや板、靴、リフトといった道具を利用して行うスポーツです。落ちる体力よりも技術のアップで勝負できるんです。

一日一日、毎年毎年、どんどん自分が上手くなっていくという成長感、充足感、これが大切なんです。自分の思っているイメージが少しずつでも達成できてくる。そこにあすへの夢、希望が生まれる。ここまできたんだからあすのレッスンではどうなるのだろう。来年の冬が待ち遠しい。こんな気持になれば病気になんかなっていられませんよね。

来たるべき高齢化社会にあたり、いかにして医者にかからない高齢者をつくるかが時代のテーマになっていますが、スキーはただの遊び、ただのスポーツという枠を超えてこのテーマに十分に対応できる手段の一つであると私は思います。

現在、働き盛りにある人なら、これから生まれて初めてスキーすることは全く恐れるに足りません。それから長い人生、一生の友にできる生涯スポーツを得たと実感するに違いありませんよ。もっとも私の生徒さんの中には六七歳で初めてスキーにチャレンジして三年目の現在、キレイに脚を揃えて滑っている女性もおりますので、ビギナーになるのに遅過ぎる境はありませんけれどね。

スキーの素晴しさ、楽しさはまだまだたくさんあります。たとえば自然の雄大さ、厳しさ、美しさに接することができること、旅をする楽しさがあること、生活・文化の異なる広い地域の仲間と知り合うチャンスがあることなど。

ぜひ、充実した素晴しい熟年ライフをおくるための架け橋として、この冬、スキーに出掛けてみてください。

ひらさわ・ふみお氏 昭和9年生まれ。浦佐スキー学校(新潟)を創立。NHKベストスキー初級・中級編元講師。スキー指導歴40年。現在(株)平沢スキー研究所代表取締役、(財)全日本スキー連盟教育本部本部員。

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