おはしで治す現代病:「血栓傷害」強い味方、納豆

1996.01.10 4号 19面

●やわらかくきれいな血管何本残ってますか?

動脈硬化とは、血管がもろく硬くなり、血液の流れがさまたげられる状態のことで、次の三タイプがある。

一つは比較的太い動脈にみられる粥(じゅく)状硬化。心臓の冠状動脈や大動脈に起こる。

二つめは血管の中膜が石灰化する中膜硬化で、大動脈、手足の動脈にみられる。

そして三つめは脳や腎臓などの比較的細い動脈の壁が肥厚し、血液の流れが悪くなる細動脈硬化だ。

天寿を全うする人はみんな若々しい血管をもっているといわれる。血管の若さには大きな個人差があるが、一般に年とともに老化し、さまざまな成人病の原因となる。

六〇兆あるという体細胞の隅々に栄養を運んでいるのが血液。しかし必要以上の栄養は脂肪の固まりとなって血管内に沈着する(粥状血栓)。それにより血の流れが悪くなると、酸素がゆきわたりにくくなりボケの原因となる。果てには血管がつまり、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こす。

しかし血栓はまったくの悪者ではなく、もともとは体の防御作用の一つ。血管が傷つくと『固める酸素』が血栓をつくって出血を食い止める。その間に傷ついた血管を修復し、それが終わると『溶かす酵素』が速やかに血栓を溶かす。しかし身体のバランスが崩れて、固める酵素と溶かす酵素の使い分けが効かなくなると、前述のような血管のつまりが生じてしまう。

●つまった血管に納豆の酵素パワーが効く

心筋梗塞には血の固まりを溶かす酵素を大量に注射する治療法がある。何と一〇〇g(一パック)の納豆にはこの注射の五分の四に匹敵する血栓溶解酵素が含まれているという。

この強力な酵素、ナットウキナーゼの発見者であり名付け親の須見洋行教授は「人工的につくった血栓の上に納豆をのせ体温と同じ三七度に保って放置したところ血栓が溶けていった。血栓も納豆も同じネバネバしたもの、それなら同じ力を持っているのでは?という偶然の発見でした」と語る。

●生食できるのは納豆だけ

納豆がすごいのは、その酵素が天然の形で存在すること。食べ物のなかにはさまざまな酵素を含むものがあるが、これだけ強烈な酵素成分を持ちながらナマで食べられるのは世界でも他に例をみない。

たとえばパイナップルを食べすぎると口が痛くなる。それが酵素のしわざだが、それでも納豆に比べればほんの微量しか含まれていない。

ところが、缶詰のパイナップルになると全然平気。殺菌のための高熱加工をしたときに酵素も死んでしまうからである。酵素の適温は三七~四〇度。アツアツご飯の上にのせるのが酵素の働きに最も有効な調理法だという。

●急浮上! ビタミンK

昨年末、学校や病院などで栄養管理の基礎資料として活用されている『四訂日本食品標準成分表』に新たにビタミンKが付け加えられた。そのビタミンKを多量に含むのが他でもない納豆であり、これが世間を騒がす骨粗しょう症に効く栄養素だというからさあ大変。冷凍庫を納豆だらけにした人もいるとか。

米不足によるご飯離れで消費量の停滞した納豆だが、無臭納豆や鉄分強化納豆、無農薬大豆使用の高品質納豆など種類も増え、安くて安全な健康食品との見直しで病院食などにもどんどん取り入れられている。

●納豆の上手な食べ方、つきあい方

確かにあらゆる臨床データが納豆の効果を示しているが、ナットウキナーゼが血栓にどういうメカニズムで作用するのかはいまだ解明中。また納豆の原料の大豆にはプリン体という成分が含まれているため、とりすぎると尿酸が増えて痛風になる可能性もあるという。

「身体に良い機能性食品というと、良い成分のみを抽出して薬として商品化したらどうかとか、やみくもにたくさん食べまくる例とかが出ます。が、身体に良い食品というのは、一日のうちの一食に取り入れることによって他の食品とのトータルバランスを良くするもの。何グラム摂取すればよいかではなくて、おいしく食べてこそ食品は薬を上回るんです」と須見教授。

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