百歳への招待「長寿の源」食材を追う:「キムチ」
キムチは韓国の誇る漬物である。その種類は二四二種に及ぶ。単に漬物であるばかりでなく、チゲなどの鍋物や炒め物のほか料理材料として広く使われている。
低塩分でビタミン・ミネラル・タンパク質も豊富で、健康面からも注目され自然発酵食品の傑作ともいわれている。韓国でビタミン剤が売れないのはキムチの威力による。
単一の野菜を漬けるのではなく、白菜・大根・ニンジン・長ネギ・ニラ・カブ・ショウガなど数種類ずつ組み合わされる。
キムチは地方によって作り方や味が異なる。各家庭でも家ごとに伝統があり、それぞれに好みが違う。北部では唐辛子も糸がらしだけを使い、スープたっぷりの白キムチが喜ばれ、南部では粉唐辛子でまっ赤になった赤キムチを好んで食べる。
最大の特徴は副材料の差でバラエティーが生まれ、味の決め手となる塩辛も二六種もある。
代表例と素材をみると
○ペチュ・・・ダシ昆布・リンゴ・ショウガ・すりニンニク・アミの塩辛・粉唐辛子・荒挽き唐辛子・砂糖・粗塩など(白菜と大根)
○スンム・・・タラコ・ショウガ・すりニンニク・粉唐辛子・中挽き唐辛子・粗塩(カブと長ネギ)
○オイ・・・ショウガ・リンゴ・アミの塩辛・すりニンニク・粉唐辛子・糸唐辛子・昆布・砂糖・粗塩(キュウリ)
○トン・・・おろしニンニク・ショウガ・ニラ・粉唐辛子・糸唐辛子・すりつぶした魚肉(スケトウダラ)(代表的な白菜漬け)
○カツトウギ・・・リンゴ・ダシ昆布・すりニンニク・粉唐辛子・砂糖・粗塩・ショウガ(大根・ネギ・ニラ)。
*カッコ内は主野菜
これらに使われる塩辛はアミ・桜エビ・スケトウダラ・タラコ・ヒシコイワシ・生ガキ・イカなど動物性タンパク質が多用されている。また唐辛子にしても粉末・中挽き・粗挽き・糸ぎりなどと細かい配慮がみられる。
唐辛子の辛味成分のカプサイシンが肥満の予防や治療に卓効ありと、京大農学部と阪大医学部の共同研究で発表されたが肥満分解を促進する作用が確認された。韓国に肥満者がみられないのはキムチの影響ともいえれよう。
三食に欠かせないキムチは韓国食事の主役であり、必ず三~四種のキムチが用意される。そして日本でも優れたキムチの特性・味の良さなどでブームを続けている。輸入キムチの量も二万㌧を超えキムチファンは拡大をみせている。また国産品も急増している。
キムチ作りのコツは温度と塩分と塩辛と原料である野菜にある。温度は低温発酵に必要な五~六度が大切。塩と唐辛子は韓国からの輸入品で間に合う。
主力の野菜が国産品と韓国産は全く異なり、白菜は国産品ではダメ、むしろ山東菜に近く水分が少なく固い。梨は固く国産品にはみられず、塩辛類も同じである。おいしいキムチは輸入品にお願いした方が良さそうである。