百歳への招待「長寿の源」食材を追う:車前子
日本の民間薬には山野草にはいるものもある。ドクダミ・オオバコ・イタドリ・イノコズチなど。しかしこれらは日本薬局方にも記載され漢方薬材としては貴重なものが多い。
(食品評論家・太木光一)
車前子の歴史は古い「神農本草紀」(五〇〇年)の上品の部に見られ、日本では平安期の「本草和名」にも記載されている。オオバコ科である。
三国志時代、敗走中の曹操軍の兵士や馬は暑さと疲れのため尿が出なくなり、ついに尿道の激痛でバタバタと倒れた。ところが、二、三日もすると馬だけが元気になった。よく観察すると、馬はある特定の草のみを食べていた。この草を煎じて兵士に与えるとただちに回復。草は馬車の通る道に生えていたので車前子と名付けられた。
分布は広く、中国中部・東部にみられ、薬材として江西・安徽・江蘇産が良品。その他台湾・日本・シベリアにも広がる。
車前子は性状が強く人家の近くにもよくみられる。繁殖力も優れているが、あまりにも容易に入手できるので評価は極めて低い。栽培法などもなく近くの道端で入手可能。野草や雑草に近いものがあり、薬効の高い薬草とは思われにくい。
車前子の薬用部分は全草と種子で、万能薬と呼んでも良いほどで適用範囲は極めて広い。
中薬大辞典によると、(1)去たん作用(2)抗菌作用(3)関節のうに対する作用‐‐と記されており、薬理では、(1)治小便不通(2)治尿道(3)治白帯(4)治熱痢(5)治泄しゃ(6)治黄だん(7)治感冒(8)治鼻血(9)治高血圧(10)治目赤腫痛(11)慢性気管炎(12)急慢性細菌性痢疾‐‐などによいとしているが、民間利用では視力増進・淋病・咳などに効果的とされている。さらに胃病には葉を、眼病には種子の煎服を勧めている。
漢方薬としては、五淋散・清心蓮子飲・牛車腎気丸などに処方されている。
薬膳利用としては車前子粥・車前子茶が手軽に利用されている。薬効面でも優れ、手軽に作れるので人気が高い。車前子は味甘、性寒で無毒。古来から医家で利用されてきたものである。
車前子粥(葉を使用)は新鮮な車前子六〇グラム、白ネギ一本、うるち米二〇〇グラムを用意。葉はよく洗い細かく刻む。白ネギを刻み、煮汁のみを残し粕は捨てる。この煮汁と葉とうるち米をよく煮て粥を作る。効能主治は利尿・清熱・明目・去たん・水腫・黄だんなどに効く。五~七日を一クールとして毎日二~三回服食する。副作用が全くなく特に高齢者に向く。
車前子茶はよく乾燥した車前子(六〇グラム)をミキサーで粉末に。車前子(一〇グラム)を鍋に入れ水一八〇ccを加え中火で五分間煮て、冷まして冷蔵庫で保管する。毎日二回車前子粉六グラムを車前子の煎じ液に溶かして飲用する。
また、手軽な車前子茶の作り方は、花の咲く夏から秋に全草を刈り、よく乾燥させる。この乾燥葉を弱火で煎じ食前に飲む。薬効が高く飲みやすい。しかも費用はかからない。