百歳への招待「長寿の源」食材を追う:魚肚(魚のうきぶくろ)

1999.08.10 47号 6面

魚肚(ユイトウ)と海参(なまこ)は中国の誇る海味乾物。ともに歴史の古い代表的な美味食品で、ゼラチン質が豊富。防老延年、防皺、美肌食として知られ、若さを呼ぶ薬食として知られている。     (食品評論家・太木光一)

魚肚は日本読みでギョトとなるが、一般的には中国語読みのユイトウが通用している。このほか魚鰾(ユイピャウ)、黄花膠(ホワンホワピヤウ)、魚白(ユイピイ)など、また単に鰾ピヤウとも呼ばれている。魚のうきぶくろのことである。

中国の名薬というと、魚翅(ふかひれ)・燕巣(つばめの巣)・熊掌(熊の手のひら)・海参(なまこ)などの中に魚肚が加わってくる。魚肚が初めて食べられたのは海参と同じ三国時代(西歴二二〇年)のころといわれ非常に古い。ともに唐代に入って年貢として使われている。産出される場所は広西・広東・浙江・駒建の各省である。

魚肚のとれる魚は 魚(ちょうざめ)・小黄魚(きぐち)・白姑魚(いしもち)ほか。共通して体長が五〇センチ以上ある大きな魚である。うきぶくろを取り出し、よく洗浄して陽光に当てて乾燥させる。質的には極めて堅く容易に切ることができない。水に漬けておくと膨らむ性質があり、粘性は強い。よく乾燥して長期保存に耐える。収量が少ないので価格は高い。しかも美味であるばかりでなく漢方薬剤として薬効も期待されるとあってファンは定着している。

中国の海味滋補品老人食として海参・魚翅・魚肚があげられる。この成分はゼラチン質でしかも低カロリーのタンパク質である。ゼラチン質はすべてトロッとして美味で、美容食品でもある。いずれも防老食品として最適で特に顔のシワをとるのによい。中国では食用ゼラチンを使った寄せ物に人気の高いのはこのためである。

成分をみると乾燥品でタンパク質八四・四%、脂肪〇・二%、カルシウム・鉄などが多くみられる。中薬大辞典によると性は甘にして平。薬効として補腎益精・滋養筋脈・止血・散 (鬱血を治す)、消腫(腫れものをちらす)、腎虚(腎臓の働きをよくする)、破傷風・吐血・痔疾ほかに良いとしている。最近では食道がんや胃にも効くとの研究も発表されている。四〇~五〇度の油でゆっくりと揚げる(油発法)とスポンジのようにふくらんでくる。クコの実を少し加えると結核の人、肌のたるんだ人、貧血ぎみの人などには効果的。実に美味である。魚肚の知名度はまだ低いが薬効の高い防老延年の効が大きく、これからが成長期である。

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら