韓国キムチ便り、良質のアミノ酸やミネラルたっぷり

1999.12.10 51号 3面

韓国にはキムチボーナスというものがある。例年11月から12月にかけて、春先まで食べるキムチを大量に漬けるキムジャンという風習があり、市場には山と積まれた白菜や唐辛子、ニンニクなどに混じって、大小さまざまな陶器のカメが並ぶ。

「韓国でも核家族化が進み、昔ほど何百株も漬ける家庭は少なくなりましたが、一家族の一冬分といえば大変な量です。それを漬けるカメも人の背丈ほどのものもあります。最近では、断熱材を使ったカメや専用の大型ポリ容器も売り出され、アパートやマンションのベランダを飾っています」と教えてくれたのは東京・上野の韓国家庭料理店「ぱんが」の洪性佑社長。

陶製のカメは虫がわきにくく、長期保存向き。キムチを漬けるほか、乾燥させた唐辛子や豆類などの保存にも使われる。プラスチック容器入りのキムチもフタを閉めたら、端を少しだけ開けて、中の空気をよく抜いてからフタを閉め直そう。

最近大人気のキムチは、栄養的に優れた発酵食品であることに加え、ニンニク・唐辛子などの漬け込み材料がもたらす効果から“スタミナ食”とも呼ばれる。調味料として加える副材料にも栄養価の高いものが多い。たとえば、アミの塩辛には食生活に不足しがちな良質のアミノ酸やミネラルがたっぷり含まれている。

東京・四谷にキムチ博物館がある。韓国料理店「妻家房」内にあり、キムチのすべてを知ることができる。

「『このキムチは腐っている』。いまから三年前、出店先のデパートで私どものキムチを購入したお客さんからクレームがきました。ビックリして返品されたキムチを調べたら、熟成が進んで古漬けになったもので、キムチ好きなら、おいしく食べられるものだったのです」と同店の柳香姫さん。このクレーム事件に端を発して、韓国食材店に併設して博物館をつくったのだという。

柳さんのキムチを食べると、そのまるい味にとても驚く人が多い。日本人のもつキムチの味のイメージと、本場のキムチの味は明らかに違うようだ。

原因は、製法の違い、そして材料の違いにある。日本の唐辛子は韓国の唐辛子と違って、ピリ辛味が強い。そこで日本で作られる主なキムチには、色づけにパプリカ(唐辛子の一種)が使われる。また、熟成期間を短縮するため、アミの塩辛などの代わりに各種化学調味料が使われることが多い。「本場のキムチはワインやチーズと同じ発酵食品で、食べ頃も、浅漬けから古漬けまで好みで楽しめるものなんです。天然塩と自然の素材のみで作られた韓国のキムチを食べてみて下さい」と語る柳さん。

おいしいキムチの選び方のポイントは?「ビニール袋入りなら製造日を確かめて新しいものを。浅漬け好きな方に喜ばれます。発酵が進むとビニール袋が膨張し、パンパンになりますが、腐敗したわけではないのでご心配なく。本場のキムチは酸っぱくなってもおいしく食べられます」。

古漬けキムチのおいしい食べ方は?「『キムチと豚肉いため豆腐添え』は同店でも人気のメニュー。白菜キムチを豚肉とネギと一緒に炒め、温めた豆腐に添えます。淡泊な豆腐にピリッとコクのある豚肉がマッチ。年配の方にも喜ばれ、ビールのつまみにも合います。夏は冷や奴で」。

▽妻家房=東京都新宿区四谷三‐一〇‐二五 工芸ビル、03・3354・0100

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