醸造酒と蒸留酒の基本関係

2000.03.10 54号 2面

酒は「百薬の長」といわれる。適度なお酒は血液循環を良くし、食欲を増進させるからだ。酒を全く飲まない人より、適度に飲む人の方が病気になりにくいという報告もある。お国柄それぞれの味があり。東方焼酎ロードを旅してみたい。

酒には大きく分けて醸造酒と蒸留酒がある。醸造酒とは果物の汁、穀類などをアルコール発酵させて、そのままかあるいは濾過してから飲む酒のこと。清酒をはじめワイン、ビールが醸造酒の仲間。

一方、蒸留酒は原料をいったんアルコール発酵させてから熱を加え沸騰させ、アルコールが詰まっている蒸気を冷やし回収して作る。単純にいえば、醸造酒は発酵させるまでの段階であり、さらに精製すると蒸留酒になる、これが基本的な関係。

そして世界中のどの醸造酒をみてもそれぞれに対応する蒸留酒がある。ビールに対してはウイスキー、ワインにはブランデー、清酒に対しては焼酎。日本の焼酎はもともと酒粕の中になお残留しているアルコールなどを利用して作られていたそうだ。コメ文化の中から生まれた世界に誇る醸造酒が日本酒なら、焼酎もまた同じ土壌で育まれた蒸留酒といえる。

焼酎には甲類と乙類がある。両者の違いは蒸留法とそれに伴う原料の違い。しかし、甲・乙で分類すると乙のほうが“格下”という社会通念があることから乙類にされた伝統的焼酎メーカーが一斉に反発し「本格焼酎」を名乗り始めた。「本格」を名乗ったことには日本で五〇〇年もの昔から作られている酒としての自負がうかがえる。これに対し甲類は明治末に開発された、まだ新しい酒だ。

本格焼酎は、蒸留する発酵液の原料の名を取って、「いも焼酎」「麦焼酎」「そば焼酎」などと呼ばれる。主に九州地方で作られ、土地の産物を使って作る。アルコール分は四五度以下と酒税法で決められ、低いものでも二〇度はある。原料の味、香りがたっぷりと残っているのが特徴。アルコールや香気成分など酒の精(スピリット)だけを濃縮した本格焼酎は酒を腐らせたり、劣化させたりする成分を全く含まないので、開封しなければ製造年月日を気にすることなく、むしろ年月がたつことでアルコールがなれて味が良くなる特性がある。

甲類焼酎は蒸留を繰り返して透明になった澄み切った焼酎。糖質、脂質はゼロ(四訂食品標準成分表より)。甲類に含まれているカロリーはすぐ熱エネルギーに変わるため身体に蓄積されないといわれる。極めて純粋で、味も香りもクセがなくシンプルなのが特徴。ストレート、お湯やサワー割り、温かいのも冷たいのもお好みしだい。また、果実酒を作る時に使用するホワイトリカーは甲類焼酎の別名。果実のおいしさと豊かな香りをうまく引き出してくれる焼酎だ。

アルコールは内臓の疲労回復に効果があるといわれる。中でも焼酎はカロリーが低く胃への負担も少ない上に、血行を良くする働きがある。また焼酎は他のアルコールと違ってお湯や水で割って飲む飲み方があるが、これは日本独自の健康的な飲み方。

さらに梅干しを入れる梅割り焼酎なら疲労回復作用が一段とアップする。梅干しに含まれているクエン酸は、胃の粘膜を保護する働きがあり胃潰瘍にも良いとされている。梅干しが苦手な人はカボスやスダチ、レモンといった柑橘類でも同じ効果が期待できるのでお試しを。ついつい飲み過ぎてしまう人には、ぜひともお勧めしたい飲み方だ。

杉本元信助教授(東邦大学医学部第二内科)によると、女性の方が男性に比べてアルコール感受性が高いのは事実だという。その理由はアルコールの処理能力に対する女性ホルモンの関与があげられる。また女性に多い自己免疫現象(自分を他のものとみなして強い炎症が起こる現象)がアルコールをきっかけに起こるという可能性もあるそうだ。基本的に女性の方が平均的に身体が小さく、アルコールを処理する肝臓が相対的に小さいということも関係するそうだ。

概して女性はアルコール性肝硬変などになりやすい。飲酒期間が短く、積算の飲酒量が少なくても発病してしまう。臨床的にも、病理的にも重症化しやすい傾向にあることがうかがえる。女性がお酒に敏感なことを自他ともに認識する必要がありそうだ。

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