健康はバランスのとれた食事から、「糖質」が不足すると

2000.04.10 55号 2面

「糖分を取ることは健康に悪い」「糖分を取り過ぎた状態が糖尿病」、そんな誤解をしている人もしばしば見受けられる。砂糖ははたして悪者か。気になる糖尿病の仕組みをはっきりと知っておきたい。

車はガソリンがないと走れない、これと同じように人間の細胞も臓器も、エネルギーがなければ働くことができません。そのエネルギー源は何種類もあります。自然界の水、空気、植物、動物など、いろいろなものを利用しています。糖尿病という病気は、さまざまな食物からとりこんだそのエネルギー源の一つである糖分(ブドウ糖)を身体の中でうまく利用できなくなった状態のこと。

ブドウ糖をエネルギー源として活用させる役割をしているのが、膵臓の働きの一つです。膵臓から分泌されている「インスリン」と呼ばれるホルモンは、ブドウ糖を細胞のエネルギーとして利用できるように処理してくれます。インスリンは歯車(ブドウ糖の代謝)をスムーズに回転(体内のあらゆる器官へブドウ糖をエネルギー源として運ぶ)させる、潤滑油の役割を果たしているといえます。

こうした一連の流れを、「ブドウ糖代謝」といいますが、この歯車は他のいろいろな歯車(脂肪の代謝など)と関連しながら、お互いに影響し合っています。ブドウ糖代謝という歯車が狂ってしまうと、身体の中で異常事態が起こり、それぞれの歯車の回転はバラバラになってしまう。糖尿病になると歯車の回転に異常が生じて、ブドウ糖をうまく利用することができなくなり、血液中のブドウ糖(血糖)濃度が持続的に高くなります。食物から取り入れたブドウ糖を血液の中まで送り込んでいるにもかかわらず、インスリンの作用が弱まっているか、または量が少ないために、ブドウ糖を身体の細胞の中へ取り込めないからです。

糖尿病の最も基本的な治療は食事制限や運動ですが、療養を乱しやすい誘惑があふれています。人それぞれで仕事も異なっているし、人生観も違う。食べ過ぎてはいけない、と頭では十分分かっていても、忙しい社会生活をしていると実行は難しいものです。好きな酒や菓子を我慢してまで生きるのはつまらない。食べたいだけ食べ、それで死ぬのなら本望、これも一つの人生です。

しかし、生きている限りクオリティ・オブ・ライフがいいことを、誰もが望んでいるでしょう。そのため病気や食生活について十分認識することは大切です。

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