百歳への招待「長寿の源」食材を追う:「プロポリス」
カットは蜜蜂の8の字ダンス。蜜源を発見して巣に帰った個体(中央)は8の字を描くように歩きまわり他の働きバチに蜜源の位置を教える
(食品評論家・太木光一)
最近プロポリスという文字を新聞や雑誌でよく見かけるようになったが、これはギリシア語である。
ポリスとはアテネの名所のアクロポリスや、日本でもよくいわれるテクノポリスと同じで都市を意味する。プロは前・前方を表しプロポリスとなると都市の前にあって都市を防衛する意味となる。
蜜蜂は四二〇〇万年も前から地球上に生息していたといわれる。初夏に入り気温が一段と高くなると蜜蜂の活躍のシーズンで、この時期に巣に持ち帰った蜜蜂に木の芽や木の皮から採ってきた樹液や花粉などと蜂ろうや自らの唾液などを混ぜ合せてニカワ状の物質をつくりあげる。
これがプロポリスでこの物質は独特の臭いと粘性を持つ。採りたて後間もないものは黄緑色で、やがて褐色にと変わってゆく。粘着力はもともと非常に強いが、暖かい時は顕著で、寒くなるともろくなる。
この粘性を利用して巣をつくったり、傷ついた巣を補修する。巣の出入口にすき間なく詰め込まれる。最大の目的はプロポリスの殺菌力を利用して、巣の入り口でコントロールし健康な巣をつくることにある。
古代ギリシャ時代には軟膏として「傷の治療用に、またエジプト時代にはミイラの防腐剤などに利用されていた。最近ではドイツのレフォルムハウスで健康の特効薬として取扱われ静かなブームを呼んでいた。
プロポリスは自然物のため成分を分析すると差異がみられるが、二〇~三〇種のフラボノイドを始め、ビタミン(B1、B2、B6、E)、ミネラル(マンガン、リン、鉄、カルシウム、マグネシウム、銅ほか)、アミノ酸(アルギニン、リジン、ロイシン、バリンほか)などが含まれ、まだ分析されないものも多数みられる。
またプロポリスにはフィトンチッド(森林の樹や葉から発散される成分)が含まれ、飲む森林浴の別名もみられる。
また数多くのフラボノイドを持ち、この効用をみると、
(1)ビタミンPを多く含む。血管強化用
(2)抗菌作用がある。インフルエンザなどにもよく、天然の抗生物質としての作用
(3)悪玉酵素を抑える。発がん物質の生成を防ぐ。またベーターカロチンも含まれ抗がん効果が大きい。
(4)成人病や高血圧の予防によく、高齢社会に向く保健食品
といえよう。
プロポリスの輸入はドイツ製品がみられ、これは前述のレフォルムハウスのようにこの研究が早く行なわれたことによる。しかし最近では最大の生産国のブラジル産が主力となった。
そして蜜蜂の種類や植物分布で成分が異なるが、ブラジル産はユーカリ樹が多く防腐、抗菌作用の強いことを意味する。
製法はアルコール抽出法によるが最近では水抽出法による良品も出回っている。
大自然の贈り物にさらに新効果が期待されるが、産出量が少なく高値であるのが残念である。