どうして歳をとると関節が痛くなるの?

2000.09.10 60号 6面

今年の夏は全国的な猛暑となり、エアコンの需要も伸びたという。「うんざりする暑さの屋外は避けて、冷房がキーンときいた室内に閉じこもってばかりいた」という人も多い。「冷房のきき過ぎでむしろ寒い思いをして、それがキッカケなのか、腰や膝などの関節のふしぶしがどうも痛くなった」という話も例年よく聞く。困ったことに、夏の暑さを逃れたツケは、秋になってやってくるのだ。

厚生省の一九九三年度患者調査によると、関節痛などの「変形性関節症」および類似症の患者数(実際に病院などで治療を受けた人数)は五〇万一〇〇〇人。症状は三〇代後半から増え始め、五〇代で急増し七〇代で頂点に達する。いずれの年代においても女性が男性を上回っている。九六年度調査でも七七万三〇〇〇人となっており、超高齢化社会の到来に伴い、このままだと今後も「関節症」の患者数は着実に増加すると予想できる。発症頻度は「六〇歳を過ぎた人で六〇~七〇%、八〇歳になればほぼ一〇〇%の人に現れる」という説もあるほどだ。

そもそも、なぜ関節が痛くなるのか。関節の骨の表面というのは軟骨に覆わていて(図A)、軟骨はさまざまな力や衝撃をクッションのように吸収し、スムーズに身体を動かす役割を担っている。しかし何十年もの間、関節を動かしていると、この軟骨はすり減っていく。また、まずいことに軟骨や結合組織に存在し、関接組織に強さや弾力性を与えている「グルコサミン」も、加齢に伴い体内ではその合成能力が衰えてくるのだ。この状態をそのまま放置すると、骨と骨とが直接こすりあうような状態となり、痛みが生じ、やがてはれたり熱を持ったり、水がたまるなどの炎症が起きてくる。これが「変形性膝関節症」の典型的な症状だ。

現在、痛みや炎症を抑えるためには薬の服用や関節内注射、そして低周波電気を患部に与えるなどが一般的であるが、どれも一時的な対処療法であり、結局はその繰り返しとなる。また、症状がひどくなると手術により人工関節を入れる方法もあるが、ほとんどの人はそれを望まないのが現状である。

そこで最近脚光を浴びているのが、薬ではなく不足してきたグルコサミンを毎日食品として食べることで問題を解決しようという作戦だ。グルコサミンは人間だけでなく、その他の動物などの体内でも合成されるアミノ酸の一種。ネバネバ物質のムコ多糖の成分として自然界に広く分布し、特にカニやエビなどの殻にはキチン質として多く含まれる。しかし、キチン質をそのまま食べても体内に吸収されない。キチン質を分解し、体内に吸収できるグルコサミンに加工してこそ、その威力を発揮する。

日本人は世界で一番エビやカニを消費する国民だが、いままでその殻のほとんどを廃棄してきた。一番大切なところを捨ててきたわけだ。

ところが海外に目をやると、イタリアなどヨーロッパ諸国ではかなり前から関節症に対するグルコサミンの有効性を確認し、その治療に用いてきた。アメリカでは一九九七年、医学博士ジェーソン・セオドサキス著の「THE ARTHRITIS CURE」(関節炎を治す)が出版され一大ブームになり、以来その人気が広く一般市場で定着している。「グルコサミン、ベリーグッド」なのだ。

日本でも近年、そんなグルコサミンを簡単にとれる、さまざまなタイプの栄養補助食品が発売されるようになってきている。それゆえに、購入者はグルコサミンの含有量、相乗効果をもたらすその他有効成分の組み合わせなど、価格とともに関節の症状改善が最も期待できそうな商品を賢くセレクトしたい。最も多い錠剤タイプの場合、いま最も注目できるのが、一粒に含まれるグルコサミンが多く、その上で軟骨のクッション的成分であるコンドロイチン、南アフリカ原産のハーブで、同じく関節炎やリュウマチに効果があるとして欧米で人気上昇中のデビルズクロウなどが一定量配合されている商品である。

グルコサミンはもともと体内で合成されるため、大量に摂取しても副作用の心配はない。薬ではなく食品なので即効性はないが、二~三カ月飲み続けることで多くの人に好結果が出るという。関節痛は、正座や屈伸運動、歩くのがつらい人に不快な生活を強いる。グルコサミンのパワーを借りて、百歳まで楽しく元気に歩きたい。

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