百歳への招待「長寿の源」食材を追う:ヤロウ

2001.07.10 71号 11面

ボリジとヤロウは日本での知名度は低い。しかし歴史の古いハーブとして欧米では生活にとけ込み、大活躍している。これから日本でも普及し成長が期待されよう。

(食品評論家・太木光一)

ヤロウとは珍しい名前のハーブである。ヤロウは英語で、日本語ではセイヨウノコギリソウと呼ぶ。ヨーロッパ原産のキク科の植物で、イギリスをはじめヨーロッパ各国にみられる。高さは六〇センチ前後、葉は濃い緑で細かい切れ込みが入っており、多数の鋸刃のように見え、セイヨウノコギリソウと名付けられた。適応性が強く数多いハーブの中で栽培の容易なものの一つだ。

イギリス人の最も好むハーブで、多くの薬草園で栽培されている。やけどや切り傷によく効き、別名“大工のハーブ”と呼ばれ、ケガの多い大工が愛用していたといわれる。アメリカに移住し始めた当時のイギリス人はこれを持参し、下痢による発熱や風邪の煎じ薬、すりつぶして軟膏や傷薬として多用した。ヤロウには収斂性と止血性があり、切り傷の出血を止めたり、傷口をふさぐ効用がみられ、殺菌力も強く、傷口の治りを早くする。葉をたたいて切り傷に当てたり、花をつぶして軟膏にして用いたり、

生の葉を噛んで歯痛を鎮めたり、さらにはリウマチの治療にも使われ万能薬視されていた。

さらにハーバス・バスとしても活躍し、花期に花と葉をつけた枝を取って乾燥し薬湯用にする。裁断したものをひとつかみほど布袋に入れ、

沸かした風呂に浸して入浴する。効能として風邪・頭痛・擦り傷・切り傷・ひびなどのほか、疲労回復・精神安定や安眠などに良く、お年寄りの保健用に向いている。

薬効のきわめて高いハーブであるが、食品としてみるとビタミンCとAが多く、ミネラル(鉄とカルシウム)を多く含み、生食用としても優れている。若葉のうちは爽やかな風味でサラダに向く。また成長して大きくなると辛味が増えてくるが、これを好む人も多い。刻んでレタス・セロリ・タマネギ・ポテトなどと一緒に使用される。サラダ以外に魚料理に刻んだ葉を散らしたり、スープの浮き身にしたり、ドレッシングに混ぜたりする。葉をホウレンソウのように茹でて、バターで炒めたり、マヨネーズソースを添えてもよい。スウェーデンではフィールドホップの別名を持ち、ビールの醸造に古くから利用された歴史もみられる。

また葉と花で作るハーブティーは薬効に富んだ飲み物として愛飲された。強壮効果に優れているとしてファンが多い。食欲増進や風邪を引いたときの発汗作用を促すものとして家庭で常備されていた。薬用・薬湯・食用・薬茶用で大活躍のヤロウ、ご愛用をお勧めする。

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