百歳への招待「長寿の源」食材を追う:とうがん(冬瓜)
高齢化時代の到来である。くずととうがんは中国や日本では古くから薬食とされ、しかも効果は大きく身体にやさしい食品として人気が高い。食べやすく味の点でもお年寄りに向く。料理の範囲も意外と広く、要研究である。
(食品評論家・太木光一)
とうがんの原産地は中国南部で、日本には奈良時代に伝えられた。ウリ科一年草のつる草である。漢字では「冬瓜」と書く。熟す時期が冬にあたるので、この名が付けられた。
果実は小さいもので一キロ、
大きなものでは三キロ以上にもなる。放っておくといくらでも大きくなるので若いうちにとる。形は丸形・長だ円形などがある。
中国では皮・肉・種子が薬用になるとして貴重視されている。とうがんの成分は九六%までが水分で、ビタミン・無機質ともに少ないが、ビタミンCは一〇〇グラム当たり四一ミリグラム含まれている。従って水を食べているのに等しいといえよう。味も極めて淡白で、固有の風味はみられない。この淡味こそが最上の味として愛好されている。この淡味を愛せない人は食通の仲間には入れてくれないかも……。
代表的な料理は煮込みやスープで、そのバリエーションの豊富さに驚くばかり。とうがんを約二・五センチに角切りし、その各面を面どりしたものを冬瓜球(トングアチウ)と呼ぶ。これを使って干し貝やかにの肉・卵を煮込んだものは干貝冬瓜球とか、蟹黄冬瓜球と呼ばれている。
上海料理では、とうがんを拍子型に切り、醤油味で煮込んだ紅焼冬瓜球、北京料理では花茄冬瓜・草茄冬瓜などが有名である。この料理の代表は小さな良質のとうがんを選び、種子とわたをとり、切り口にのこぎりの歯形の切り込みを入れる。胴体や蓋になる部分に花模様や文字などを特殊ナイフで刻み湯通しする。中にひな鶏・アヒル・小えび・ぎんなん・干し貝柱・干しえび・たけのこ・椎茸・蓮実などを詰め、味をつけた清湯で一~二時間蒸す。冬瓜〓と呼ぶ。
中国ではこの冬瓜〓が食卓に出されると、全員が手をたたいて歓迎する。清淡の中に滋味があふれ、最高のぜいたくなスープと呼ぶことができよう。
とうがんは柔らかくローカロリー。美容食や高齢食として喜ばれている。中国では減肥軽身の食品とみている。
中薬大辞典による薬効は、利水(利尿)・清痰・清熱・解毒・治水腫・脹満・脚気・痰喘・暑熱煩悶・消渇・瀉痢・酒毒ほかとなる。数多くの野菜の中では水分が最も多い。腎臓病の食事として利尿作用大なのはカリウムが比較的多いことによる。
とうがんはその他の野菜類と比べて脂肪分がほとんどなく、ナトリウムも極めて少ない。このため腎炎・糖尿病・高血圧の患者には理想的食品ともみられている。とうがんの煮食は慢性胃炎・慢性腎臓炎にもよいことが判明してきた。
また、とうがんの種子は潤肺・利水に、葉は治消渇・止渇によく、皮は利水、消腫によいとされている。日本でも高齢時代に入ったことにより、消費量はこの一〇年で倍増した。