なが~いつきあい!味な友だち:加藤美蜂園本舗「サクラ印ハチミツ」
「ハチミツの歴史は人類の歴史」と英国のことわざにあるほど、天然の甘味・栄養食としてハチミツと人間のつきあいは深い。エジプトでは三三〇〇年前のハチミツの壺がピラミッドから発見されている。日本でも、平安時代に宮中への献上品だったと伝えられており、非常に貴重なものだった。いまやハチミツは健康的な自然食品として日本人の食卓に定着したが、実はここまで身近になったのは戦後のこと。その牽引役となったのが、ハチミツといえば誰もが思い出す(株)加藤美蜂園本舗(東京都台東区、電話03・3875・1182)の『サクラ印ハチミツ』だ。常に“純粋”にこだわり続け半世紀以上愛される長寿商品となった道程に迫った。
戦後、砂糖などの甘味は高価で庶民の口になかなか入らなかった。加藤美蜂園本舗の初代社長・加藤重一氏はそこでハチミツに着目。さまざまな苦労の末ハチミツを集め、商売を開始した。偽物のハチミツがたびたび出没したが、『サクラ印ハチミツ』は常に“純粋”にこだわり続けた。
加藤氏は、当時統制品だったハチミツの輸入解禁に尽力し、昭和38(一九六三)年から輸入を開始。それから多くの日本人の口に入るようになった。そして“純粋”を保つため、品質基準を作り、現在の厳しい品質管理につながっている。
ハチミツ普及のために同社はさまざまな試みを行った。覚えている人もいるかもしれないが、デパートにマネキンを立たせ、パンに塗って試食するデモンストレーションを展開。また、ハチミツのレシピ提案や健康性、厳格な品質基準の紹介などを書いたパンフレット「はちみつミニミニ・百科」を二五年以上も希望者全員に無料配布している。ロングセラーの秘訣は、この地道な普及活動と本物だけを消費者の口に届けるという“純粋”へのこだわりにあったのだ。
現在ハチミツは、甘味料や栄養面ばかりでなく、魚の臭みを取る、肉を柔らかくする、ヨーグルトに混ぜるとカルシウムの吸収率が高くなるという報告もされており、機能面でも優れた食品として再注目されている。そのまま食べても良し、料理に使用しても良し、ハチミツは食品の万能選手だ。