百歳への招待「長寿の源」食材を追う:ナルコユリ
エビスグサとナルコユリはともに有用な漢方薬材として知られているが、前者はハブ茶として、後者はおいしい山菜として有名。比較的手軽に栽培もできる。ともに薬効の広さと高さに驚かされる。日常の生活に利用をおすすめする。
(食品評論家・太木光一)
ナルコユリはユリ科の多年草で、日本では本州・四国・九州などに分布。明るい山林の中や草地に自生している。うまい山菜としても知られ、有用な漢方薬材でもある。中国での分布はやや北部で、東北三省をはじめ河北・河南・山東・山西などが主産地である。草丈は六〇センチ以上で最大一・二メートルに達する。山菜としてばかりでなく、細い吊り鐘のような乳白色の花がいくつも垂れ下がって咲く姿は観賞用にも適し、花期以外でも柔らかいササの葉に似た葉姿が愛されている。
ナルコユリは効用の高い漢方薬材として有名。根茎は黄精の一種とみられ薬効が高い。中国では花期が5~6月、春と秋に根茎を採取するが秋の方が品質は優れている。採取した根茎は蒸してから乾燥する。主として煎用するが、時に外用する場合もある。特徴として抗菌作用が強く、血圧降下作用も高い。性は甘く平(穏やか)である。
期待される効用として
(1)壮筋骨・益精髄・変白髪…筋骨を強くし、精力を高め、白髪を黒髪に変える。百病を治すともいわれ、老化を防ぎ成人病の予防薬となる
(2)治脾胃虚弱…脾臓を強め胃の虚弱を治し身体の無力化を治す
(3)治肺結核…肺結核を治す。滋養強壮剤の効能を持つといわれる
(4)治眼・補肝気・明目…眼病、特に老人性の眼病によいといわれる
(5)降圧作用…血圧の降下作用があり、過血糖を抑制する作用がみられる
以上、極めて薬効が広く効果が高く期待される漢方薬といえよう。
また食用としても優れた山菜である。可食部分は若芽と花の部分で、若芽は3~4月ごろが摘みごろ。伸びても柔らかい先の部分は食べることができる。下ごしらえは、若芽に塩ひとつまみ入れて熱湯でゆで冷水にとり水気を切る。調理法のいろいろとして、一番外側のハカマだけをとり、そのまま天ぷらに。鮮やかな若緑色も美しい。
また、ひたしもの・和えもの・酢のもの・汁の実などに幅広く利用される。ひたしものは、ゆでたものをよく絞り、醤油・酒などを適量さし、削り節をかけるとまた別の味わいがある。和えものには辛子和え・ごま和え・じんだ和えなどがある。現代風にマヨネーズやドレッシング和えもよい。
ユリ科の山菜は共通してほのかな甘みがみられる。ナルコユリはアスパラガスにも似ている。彩りよく貴重な山菜といえよう。