百歳への招待「長寿の源」食材を追う:スベリヒユ
スベリヒユ、ハマゴウは中国では庶民の薬として愛されている漢方薬である。ともに涼血の力がある。今後もますます愛用者が増えると思われる。
(食品評論家・太木光一)
スベリヒユはスベリヒユ科の一年草で、温帯から熱帯にかけて世界各地に広く分布する。日本でも全国各地の日の当たる道ばたや畑地などにみられる。6~8月ごろ、花の咲く前のものを、葉・茎ともに摘みとり食用とする。それ以降は茎の上半部の柔らかい部位を用いる。ぬめりと酸味があり、ゆでて水にさらし、カラシ醤油和え、クルミ和え、酢の物、炒め煮などに利用される。
また、スベリヒユは食用ばかりでなく漢方薬として用いられる。日本の場合、全草を用いて、茎葉のあるうちに採取し、細かく刻み天日で乾燥させておく、非常に広い範囲で薬効がみられる。利用法は、痔疾には乾燥した全草一五~二〇グラムを水四〇〇ccで半量ぐらいに煎じ洗浄液として用いる、膀胱炎には生葉の絞り汁を服用、イボにはカミソリで切り落したあと生汁をつける、虫さされには生葉を絞り汁を塗る‐‐など多様。
中国では、スベリヒユは「馬歯 (マーチーチェン)」という。そのほか馬歯草・馬 ・五行草・酸 ・長寿菜・蛇草など二〇を超える別名がある。これは歴史の深さ、分布の広さを意味している。また庶民性も極めて高く、中国各地で産出される =ヒユは利用度が高い。
成分をみるとビタミンB1・C・タンニン・サポニン・蓚酸(しゅうさん)カルシウム塩などを多く含む。薬理作用では、エタノールエキスが試験管内で大腸菌・赤痢菌・チフス菌などに対して顕著な抗菌作用のあることを示している。薬能として清熱・解毒の効があり、また涼血・利腸の力があるので瘡瘍に用いられている。薬聖李時珍によれば、諸病に主効のあるのは、その血を散じ、腫を消す効力があるからで、その主治とするところは血を散じ、腫を消し、腸を利し胎を滑し、毒を解し、淋に通じ、産後の虚汗を治すからとしている。
用途をみると消炎・散血・消腫・利尿薬として血痢・淋病・帯下・痔・イボなどに煎服もしくは煮汁で温罨法(オンアンホウ=温湿布)することとある。そのほか民間薬として口唇の荒れ・歯肉炎・丹毒・虫さされなどに生汁もしくは煮汁を塗ることを勧めている。このため漢方薬剤として馬歯 散・産宝方などもみられ、食用・薬用ともに優れた植物といえる。
◆五行草茶
スベリヒユの全草からエキスを抽出して乾燥粉末にし、お湯に溶いて飲むタイプのものが「五行草茶(ごぎょうそうちゃ)」として日本でも入手できるようになった。カリウムを多く含み、強い利尿作用を持っているので、身体の余計な水分を取り、むくみを解消する。また、白血球の食菌作用を強めることから、大腸菌などによる各種の感染症に対する抵抗力を高める。これからの季節、食中毒の予防に使えよう。抗炎症・解熱・解毒作用もあるのでアトピー性皮膚炎などにもよく用いられている。
問い合わせ=日本中医薬研究会(電話03・3273・8891)