百歳への招待「長寿の源」食材を追う:敗醤
敗醤・田七人参はともに中国に広く分布し、薬用価値は高く、古くから利用されている。前者は清熱解毒・下痢などに、後者は止血・強心作用の高い効果で知られている。また、いずれも健康茶として愛用され、敗醤茶は利胆・消炎に、田七茶は活血・止痛などに。ともに庶民の食材として飲みやすく、長期服用が可能とあってファン層は広い。
(食品評論家・太木光一)
敗醤はハイショウと読み、中国語ではバイジャン、日本語ではオミナエシ(女郎花)、別名はボンバナ。中国では根に腐敗した豆醤の臭気があるところから敗醤の名前がつけられた。アジアには一五種の仲間がみられ、日本では秋の七草として人気が高い。
オミナエシは山野に自生する多年草で、茎の高さは一~一・五メートル。根から出ている葉は羽状で半ば裂けている。葉は対生し毛が少ない。この葉は飢饉の時に食用とされた。このオミナエシによく似た植物でオトコエシがある。花は8~10月に咲くがオミナエシの黄色に対し白色の小花で、ともに薬用として、オミナエシは主として根を、オトコエシは全草が利用される。
中国ではこのような区別をせず、白花敗醤(オトコエシ)と黄花敗醤と色分けして呼んでいる。後者は全中国でみられ、生産は10月、花が落ちてから、その根を掘り出しよく乾燥する。
敗醤の性味は苦にして平。敗醤の薬能は高く、清熱・泄結・排膿作用があり、お血の滞っている産後の腹痛によく、行血・活血薬を配布して用いている所もある。
『名医別録』には浮腫、結熱風痺、不足を治し産後の疼痛を除くとある。また気を増し、肝を利し、目を明らかにする効果があり、眼病の要薬として目痛・涙出・赤腫・肝炎などに用いられている。
『中薬大辞典』によれば、清熱解毒・排膿破〓・治膓痛・下痢・赤白帯下・産後お滞腹痛・目赤腫痛・疥癬などに効能がみられるとする。また現代実用中薬によれば特に治腸炎下痢によいとしている。
利用法として一回につき二~三グラムの煎用が望まれる。
薬効として広いものがあり、庶民の生活面に幅広く利用されているといえよう。
(1)治腸痛(よう=悪性の腫物)によく、〓苡仁十分・附子二分、敗醤五分を煎用する。これは〓苡仁敗醤湯と呼ぶ漢方薬湯で、一般にもよく知られている。
(2)治産後悪露(七~八日止まらない状態)に対し敗醤・当帰・芍薬・竹如・生地黄ほかを煎じ空腹時に煎用する。
(3)治産後腰病に対し効果的。敗醤・当帰・芍薬・桂心ほかを煎じ空腹時に煎用する。
(4)治産後腹痛に効果大。敗醤のみを水で煮て毎日三回飲用する。
(5)治赤眼によい。敗醤・荊芥・草決明・木賊などを水で煮て飲用する。
(6)治痛腫毒に効果が期待。鮮敗醤・地瓜酒に水適量を加えて頓服する。
(7)治赤白痢疾で鮮敗醤と氷糖で薬水をつくり頓服する。(以上、中薬大辞典より引用)
また敗醤は健康茶として庶民に親しまれている。この薬効として利胆・排石・消炎によく、長期の服用でも副作用はみられない。しかも飲みやすく期待効果は大きい。