百歳への招待「長寿の源」食材を追う:田七人参
敗醤・田七人参はともに中国に広く分布し、薬用価値は高く、古くから利用されている。前者は清熱解毒・下痢などに、後者は止血・強心作用の高い効果で知られている。また、いずれも健康茶として愛用され、敗醤茶は利胆・消炎に、田七茶は活血・止痛などに。ともに庶民の食材として飲みやすく、長期服用が可能とあってファン層は広い。
(食品評論家・太木光一)
田七人参は、ほかに田三七・人参三七・参三七・田漆・血参・金不換などの呼び名を持つ。ウコギ科に属し、薬膳や薬酒にも利用される。中国で田七が薬材として利用され始めたのは一六世紀頃。当時、雲南省に曲煥章という医者がいた。煥章は狩りが道楽で、その日も山で一頭の大虎を仕留めた。急いで村に帰り運び人を連れて戻ったが虎の姿は見えなかった。残された虎の血痕をたどって行くと、虎は草の根を食べていた。しばらくして虎の血は止まり、元気よく走り去った。この草こそが田七であった。煥章はこの根を採取し、患者の傷の治療に使って大もうけしたと伝えられる。
主産地は雲南・広西・四川・湖北・江西省など。特に雲南省文南や西疇などで大量に裁培され、全産出量の九〇%に達している。多年草で高さは三〇~七〇センチほど。薬用となる根の部分は短円柱形で二~五センチ。播種して三~七年かかるので田七、三七の名前が生まれた。
田七の薬理作用として止血・抗真菌作用が報告され、実験の結果からも止血・強心作用が証明されている。最近の中国では田七粉は動物の冠状動脈中の血液流量を増加させ、心筋の酸素消費量を軽減させ、そのため心臓の負担を軽減し、血液中のリポイド量とコレステロール量を減少させることも認められている。これにより冠状動脈疾患・狭心症・心筋梗塞・高血圧の治療に利用。肝臓への血液をよくする効果は顕著で急性・慢性肝炎、特にアルコール性肝炎などの肝疾患に多く利用されている。
田七の効能をまとめると、止血・止痛・消腫・止〓(〓=うっ血)の四種が主要なもので、漢方薬剤として有名な片仔廣の主剤となって配合されている。
・紅杞三七鶏…枹杞子一五グラム、田七一〇グラム、猪肉一〇〇グラム、小白菜・コショウ、小麦粉ほか。滋補肝腎・大補気血・貧血・体虚症に効果
・三七蒸鶏…田七二〇グラム、肥母鶏一五〇〇グラム、紹興酒、ショウガ・ネギ、食塩ほか。大補気血・益色助顔・適用貧血・顔面色痿・産後血虚などに
・田七酒…田七一〇〇グラム、紅花三〇グラム、当帰一〇グラム、焼酎一・八リットル。就寝前に服用、肩こり
・腰痛などに・田七丹参茶…田七と丹参が主原料。活血・止痛・冠心病などに効果。
田七人参(三七人参)は雲南省を主産地とするウコギ科の薬用人参の一種。中国ではお金にも換え難い貴重なものという意味で「金不換」(きんふかん)という呼び名もあり、昔の中国では特権階級の人しかその恩恵にあずかれないものだった。特に女性やスポーツ選手の間で、田七人参は体調を整える際に大活躍している。田七人参茶は田七の中でも最高級といわれる五~七年根のものを使ったエキスを顆粒状にしたもの。根そのものを粉状にしたものよりも飲みやすく、苦味もマイルド。お湯に溶いてお茶として毎日の健康維持に。
●問い合わせ先=日本中医薬研究会(電話03・3273・8891)