体の中も“環境保全”が大事 ヨーグルトで花粉症・胃潰瘍・アトピーの抑制も!?

2003.02.10 90号 2面

地球に環境問題があるように、人間の身体にだって環境問題があるのだ。特に、腸の中は重要。腸の環境悪化により、有害菌が増え、腸内の腐敗・汚染が進み、老化促進、病気の原因ともなる。逆にいえば腸内環境改善が健康増進につながるということ。その腸の環境保全に役立つのが乳酸菌やビフィズス菌であり、食品の代表格が“ヨーグルト”だ。

◆乳酸菌摂取はヨーグルトが一番

味噌、醤油、漬物、チーズ、ヨーグルト、乳酸菌飲料……。これらは、まさに乳酸菌の働きによって作られている食品。中でも乳酸菌を摂取するためには、栄養豊富な乳を原料にしたヨーグルトがベストだ。

ヨーグルトによって生きた乳酸菌を摂取すれば、(1)便秘の改善(2)腸内腐敗の防止、下痢の改善(3)有害菌の増殖抑制・腸内感染抵抗性の増強(4)腸内菌叢の正常化で有用菌を増やす(5)腸内の正常化(6)免疫機能を高める(がん細胞に対する免疫力増強作用、乳酸菌による発がん抑制、再発抑制)‐‐と数多くの効果が研究され、認められている。

そのほか免疫力アップによるアレルギー抑制、これからのシーズンに朗報な花粉症への効用も。牛乳のように下痢の心配がない、保存性がいい、料理の風味を高めおいしくしてくれるなど魅力もいっぱい。少し前までは、「何となく健康」というイメージだったが、いまや研究によって裏付けされた保健作用が期待できる食品なのだ。

◆ヨーグルトは多種多様

ヨーグルトの規格は、法律で定められており(表1)、(1)はっ酵乳(2)乳製品乳酸菌飲料(生菌と殺菌にさらに分類)(3)乳酸菌飲料‐‐に分けられる。(1)は皆さんがイメージするヨーグルト。(2)の中では“生きた菌”が重要となってくる。最近よく見かけるプロバイオティクスは、乳酸菌が生きて腸まで届くことがキーポイントで、ヤクルトなどは(2)の生菌に属するため、プロバイオティクスとして展開しているのだ。

◆ヨーグルトは何を基準に選ぶ?

●種類(タイプ)で選ぶ

何も混ぜない「プレーンヨーグルト」、寒天やゼラチンなどで固めた「ハードヨーグルト」、やわらかくて果実などを混ぜ込んだものも多い「ソフトヨーグルト」、液状にした「ドリンクヨーグルト」、アイスクリームにした「フローズンヨーグルト」がある。「プレーン」は料理に、「ソフト」や「フローズン」はデザートにと、自分が食べたいシーンに合わせていろいろ選べるわけだ。

●機能で選ぶ

最近よく目にする「プロバイオティクスヨーグルト」は、酸に弱いといわれる乳酸菌の中でも、パワーアップした乳酸菌が生きて腸まで届き健康増進に役立つというもの。注目のプロバイオティクスヨーグルトは表2にまとめた。カタカナや英数字が商品名に多いのは乳酸菌の名前が由来しているから。基本的にはすべて整腸作用があり、前記の(1)~(6)の効用は期待できる。けれど、ヨーグルトは食品。薬とは全く違うと心得ておくことも重要。

さらに、フルーツタイプでもアロエや野菜を混ぜたヨーグルトで健康訴求しているものや、ビタミンCやカルシウムを添加した商品も出てきている。

※プロバイオティクス

腸などで働く、人間の健康のために有益な生きた菌のこと。20世紀は抗生物質などを使った“治療の時代”だったが、21世紀は“予防の時代”として注目されている。

●味で選ぶ

味は、生乳のおいしさにこだわった商品と、果実・果汁にこだわった商品に分けられる。ヨーグルトは乳酸菌の違いで酸味のおいしさが変わり季節によっても微妙に変化するので、一度に三品くらいを並べて食べ比べてみると微妙な味の違いが分かる。果実・果汁のフレーバーは、ストロベリー、ブルーベリーが多く市場に出回っているが、最近では香港スイーツ(ライチなど)を使った新しい商品が登場。また、無糖で果実だけの甘さだけといったヨーグルトが発売されているほか、「ゴーヤとパインのヨーグルト」なんていう一度は口にしてみたい商品も出ている。

食感の楽しみとしては、プルプルしたヨーグルト、粘着性のあるのびーるヨーグルトなど、こだわった商品もある。海外にはチョコレートやコーヒー味があるという。

インターネットの世界で食べ比べて自分なりに評価して発信している人がいる。ほんの一例を挙げてみると、

(1)『おやつ合衆国』さん(http://www.nona.dti.ne.jp/~zoro/)

(2)ヨーグルト好きな専業主婦「ぐるぐる」さんによるヨーグルト好きのためのページ『ヨーグルト三昧』(http://cheese.s5.xrea.com/)

(3)sugarさんの「超個人的」食べモノ中心サイト(http://www.alpha-net.ne.jp/ users2/ misugar/ index.html)など。

辛口批評も中にはあるが参考になるかも。

◆乳酸菌とビフィズス菌

乳酸菌には多くの種類がありラクトバチルスといわれている乳酸桿菌と、ビフィズス菌がある。ともに強い酸(胃酸など)が苦手で、ビフィズス菌は酸素があると生きていけない。

多くの乳酸菌は、乳酸発酵で乳酸だけを作るが、ビフィズス菌は酢酸も作る。この乳酸や酢酸が有害菌の増殖を抑え腸内腐敗防止、腸内菌叢の正常化、腸管の運動の活発化-をするので栄養素の消化・吸収が向上する。さらに免疫機能を高める働きがあることも最近の研究で明らかになっている。

乳酸桿菌は主に小腸で活躍し、ビフィズス菌は主に大腸で活躍。腸内の環境を整えてくれるという働きは共通している。

◆話題の「カスピ海ヨーグルト」

二〇世紀初頭にロシア生まれのノーベル賞学者、メチニコフがブルガリア地方に暮らす人々に長寿者が多いことに着目し、「ヨーグルト不老長寿説」を唱えた。現在でも、東欧はヨーグルトの消費量が多い。もう少し東の長寿地域としてコーカサス地方は有名だが、大ブームとなった「カスピ海ヨーグルト」の発祥の地でもある。この地方のグルジアという国からヨーグルトを持ち帰った研究者の一人、家森幸男京都大学名誉教授によると、グルジア人は日本のぬか床のように各家庭でヨーグルトを持っており、毎食どんぶり一杯食べる。これが長寿につながっているという。

ただ、カスピ海ヨーグルトで注意したいのは、衛生面。「雑菌が混入したりすると違う物が出来上がっている可能性もある」(家森教授)と指摘する。衛生面のキープに自信がない人は、やっぱりお店に並んでいるヨーグルトを食べるのが一番だ。

◆ヨーグルトの食べ方

基本的にヨーグルトは、一日一〇〇グラムが目安といわれているが、研究者は二〇〇~三〇〇グラム食べればさらに乳酸菌の摂取量も増えて、その健康効果への期待は大きいという。“生きた”乳酸菌がキーワードで、酸に強い機能を持ったヨーグルトの摂取をすすめる。

ただし、乳酸菌が死んでも、免疫力を高めるなどの働きは期待できるので、とにかく毎日ヨーグルトを食べる習慣をつけることが肝心だ。そのまま食べ続けることはもちろん、料理にも応用できるので、下のレシピを参考にしてみて。

●抹茶のヨーグルトゼリー

<材料>

・粉ゼラチン……10グラム

・牛乳……1・1/2カップ

・水…………大さじ5

・プレーンヨーグルト……………1カップ

・抹茶……小さじ1・1/2

・ゆで小豆………適量

・砂糖……………80グラム

<作り方>

(1)粉ゼラチンを分量の水に振り入れてふやかす。

(2)鍋に牛乳と、抹茶と砂糖を混ぜ合わせたものを入れて弱火にかけ、砂糖が溶けたら(1)を加えて煮溶かす。

(3)鍋底を冷水につけて粗熱を取り、ヨーグルトを加えて混ぜ合わす。

(4)(3)を容器に入れて冷やし固め、好みで小豆を添える。

●タンドリーチキン

<材料>

・鶏もも肉………大2枚

・パプリカ………適量

・ピーマン………適量

[漬け汁]

プレーンヨーグルト……………1カップ

ニンニク(すりおろし)…………………1片

ショウガ(すりおろし)…………………1片

サラダ油……大さじ1

トマトケチャップ……………大さじ3

カレー粉……小さじ1

ターメリック…………大さじ1/2

一味唐辛子……少々

塩…………小さじ1/2

コショウ………少々

レモン汁……小さじ1

<作り方>

(1)鶏肉は脂身を取り除き、食べやすい大きさに切る。

(2)ビニール袋に漬け汁の材料を入れて混ぜ、鶏肉を加えてもみこみ、そのまま1時間から1晩ほど漬け込む。

(3)250度Cに熱したオーブンで、20分ほど程良い焦げ目がつくまで焼く。

(4)火を通したパプリカとピーマンを付け合わせる。

●友禅あえ

<材料>

・大根……………300グラム

・ニンジン………50グラム

・キュウリ…………1本

・塩……………小さじ1

・ツナ缶詰………小1缶

・さけるチーズ……1本

・白ごま…………少々

[A]

プレーンヨーグルト………1/4カップ

砂糖…………小さじ2

レモン汁…大さじ1/2

からし………小さじ1

<作り方>

(1)大根、ニンジン、キュウリは、細い千切りにし、塩をふっておく。

(2)ツナ缶をほぐし、さけるチーズを細かくさく。

(3)Aの材料を混ぜ合わせドレッシングを作る。

(4)水分を絞った(1)と(2)をボウルに入れて混ぜ、器に盛って(3)のドレッシングをかけ、白ごまを飾る。

●アップルケーキ

<材料>

・卵……………………大1個

・砂糖…………………40グラム

・バター………………20グラム

・バニラエッセンス…少々

・リンゴ………………200グラム

・レモン汁………大さじ1

・サラダ油………小さじ1

・生クリーム……1/4カップ

[A]

小麦粉……………80グラム

スキムミルク…大さじ3

ベーキングパウダー……小さじ1/2

[B]

プレーンヨーグルト……1/2カップ

砂糖……大さじ1・1/2

<作り方>

(1)Aを合わせて2回ふるう。リンゴは6分割にして厚さ2~3ミリのイチョウ切りにし、レモン汁を振る。

(2)ボウルに卵を割りほぐし、砂糖(40グラム)を加えて混ぜ、(1)の粉、溶かしバター(10グラム)、バニラエッセンスを加えてさっくり混ぜ、(1)のリンゴを混ぜる。

(3)フライパンにサラダ油と残りのバターを溶かし、(2)の生地を流し入れ、フタをして弱火で10分焼き、表面が乾いてきたら裏返して5分焼く。

(4)生クリームを5分立てにしBと混ぜ合わせ、(3)の上からかける。

◆研究者から見たヨーグルト食べ方術 “お便り所”で健康確認 理化学研究所微生物機能解析室・辨野義己室長

理化学研究所の辨野義己(べんの・よしみ)氏は、大腸からの健康を訴える。

大腸には500種類以上の細菌が住み、その重さたるや1.5キログラム。病気の種類が一番多い臓器でもあります。つまり大腸は“病気の発信源”なのです。だからこそ、大腸内をいかにコントロールするかが重要で“生きた微生物”こそがその働きをしてくれます。最も適した食品がヨーグルト。“生きた”乳酸菌が大腸まで届くヨーグルトを選んでほしい。トクホは生きた菌が大腸まで届く商品の目安になります。もちろんヨーグルトだけを食べていればいいのではなく、食物繊維の摂取や運動をすることも大切です。

大腸の健康状態を教えてくれるのがトイレです。トイレに入ったら自分の出したものを見る習慣をつけてください。トイレは「便所」と書きますが、私たちの健康状態を伝えてくれる“おたよりどころ”なのです。1日300グラム以上が理想で、臭いがきつくなく、スムーズに排泄されれば、健康状態も良いと判断できます。これは誰かに見せる物ではありません。自分自身でチェックして健康状態を判断できる大事な“宝物”なのです。

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