万能選手「アミノ酸」 なぜ、いまアミノ酸に注目なの? 渡邉久良子氏に聞く
日本では、スポーツ医学や科学に関しては、一〇年くらい遅れていました。昔は、精神論で水も取らずに運動をしていた時期もあったほど。それが「いかに上手に水分を摂取すれば良いか」に変わり、さらにエネルギー源として糖質を最も効率的に考える時期がありました。そして現在は、アミノ酸を摂取する方がより効果的なことが、学問的に分かってくるようになったのです。
アミノ酸を摂取すると、記録も出るし(筋力の向上)、疲れにくい(持久力の向上、疲労回復)。いまやほとんどの高校生スポーツ選手も飲んでいるほど。選手の種目によって身体作りが違いますが、トップにいる人ほど上手なアミノ酸摂取を実施しています。過激な薬と違って常習性もない、人の身体の一部として必要な成分なので、ドーピングなどに一切関連しない。多く取り過ぎて身体で使われなければ、尿として外に出ていくため害もなく、ありがたいことばかりです。もちろん異常な過剰摂取は避けた方がいいと思いますが…。
なぜ、いまアミノ酸かというのは、こうしたスポーツの世界で実証されてきたアミノ酸のパワーが、一般に広まったからです。脂肪を燃焼したり、皮膚を美しくしたり、代謝を促進する作用への期待が高まっているのです。特に女性にはダイエット効果に魅力があるようですが、脂肪についてはむしろ男性の方が問題です。脂肪は取り過ぎると身体に悪さをしてしまい、生活習慣病の原因ともなります。
社会全体を見ると、明日の雇用も分からない時代の中で、ストレスがうっ積しております。疲弊しきった人たちは、アミノ酸をどんどん消費してしまう。一方、食べ物でのアミノ酸の摂取量は足りなくなっているのです。いまの時代、食事だけでは必要な栄養をすべて取ることができません。食材の含有成分自体が変わってきています。また、現代人はきちんと時間を取って三食食べられないのが常になっています。普段の食事にプラスして、アミノ酸入りの飲み物やサプリメントを取ることは非常に有効だと考えます。
具体的なアミノ酸の選び方は、まず自分を把握すること。毎日の食や生活習慣、健康状態を自覚することが重要です。その上で、自分にぴったりのアミノ酸を上手に取ることが最良だと思います。
例えば、「二倍飲んだら元気になる」というわけではなく、量は「自分が飲んで元気になったところが適量」です。スポーツの現場でも、前に飲んでエネルギー源とするものもあれば、後に消耗した筋肉の回復のために飲むものもある。タイミングは「疲れた夜に飲んで寝たら、次の日の朝元気になった」というのであればそれで良いでしょう。身体が変化したなと感じるポイントを、量・タイミングとも自分で探してみてください。わからなければ、栄養士などに相談するのも一つの方法です。
(オフィス大原 管理栄養士・健康運動指導士・料理研究家 渡邉久良子氏)