ヘルシートーク:タレント・大桃美代子さん

2010.10.10 183号 05面

 テレビ番組の司会などで活躍中の大桃美代子さんが、故郷の新潟県魚沼市で米作りを始めて今年で4年目。手間のかかる無農薬栽培に悪戦苦闘しつつも、地域の人たちと連携したり、自作の米を使った食事会を開くなど、活動の幅を広げています。

 ◆目指したのは、震災復興と新しい食の提案

 米作りを始めたきっかけは、2004年の中越地震です。たまたま魚沼の実家に帰省していて、あの地震を経験しました。それまでは、田舎って退屈でいつまでも変わらないなと思っていたのに、たった1回の揺れでこれだけ壊れてしまうとは…と近隣の被害を見て愕然としました。

 震災復興のために何かできないかと切実に思い、米どころ・魚沼だからこそ、米を通じて地域から発信していこうと思い立ったわけです。

 私が作っているのは、雑穀の一種である古代米の黒もち米。数年前、韓国に語学留学した時、韓国人の肌がきれいなのは、野菜をたくさん食べることと、ごはんに雑穀をまぜるからだと知って以来、雑穀の美容効果に注目していました。

 「桃米」と名付けたこのお米も、ポリフェノールの一種であるアントシアニンが豊富で、アンチエイジングにとても効果的。白米にまぜて炊くと、お赤飯のようなきれいなピンク色になります。最近、余り気味の白米をもっと食べてもらうために、栄養豊富な古代米をまぜるという新しい食の提案ができたら、と思っています。そうすれば、魚沼のお米産業にも貢献できるはず–そんな志を胸に、桃米作りに励んでいます。

 ◆地域連携と食育の一環で始めた「田んぼの学校」

 魚沼出身とはいえ、それまで農業なんてまったくやったことがなくて、4年目のいまでも試行錯誤の連続です。田植えから稲刈りの時期は、週1回のペースで魚沼に帰って、父と一緒に早朝から農作業です。無農薬・有機肥料栽培だから、とにかく草取りが大変。さらに、近隣農家の普通米に受粉しないよう交配の時期をずらしたり、スズメを防いだりと、白米の何倍も手間がかかるんですよ。

 でも、桃米作りを通じて地域の人たちといろいろと新しい試みをスタートさせ、いま、とても充実しています。「桃米酒」を作りたいと、地元の酒蔵に麹のテストをしてもらっているのもそのひとつ。桃米はまだ赤字ですが、なんとか収益を挙げて六次産業化できないかと模索しているところです。

 また、地元の小学校の子どもたちに農業体験してもらう「田んぼの学校」も始めました。子供の順応力って素晴らしいですね。最初は「え~、裸足で田植え~?」なんて嫌がってたのに、そのうち「面白い!」に変わっていくんです。田んぼにいるカエルやミミズを観察する“生き物調査”も、最初は怖がっていたのに、こういう生き物がいるからこそ苗が育つのよって教えると「そうか、仲間なんだ」って慈しむようになっていきました。

 10月11~29日に名古屋で開かれる、生物多様性条約の国際会議「COP10」で、実はこの「田んぼの学校」について発表する予定です。無農薬農業に取り組む中で気づいた生物多様性の大切さについて、いろいろお話しできればと思っています。

 ◆桃米料理を楽しむ異業種交流会も主催

 都内では「桃米を楽しむ会」という異業種交流会を定期的に開いています。いろいろなレストランで桃米を使った料理を楽しみながら、みんなで日本の農業を考えようという会なんです。大学教授、ジャーナリスト、流通バイヤー、生産者、商社マン、食育NPO関係者、テレビマン、タレントなどなど、バラエティに富んだ方々が毎回、数十人も集まってくれます。

 この会でプロに作ってもらう桃米料理は、いつも“目からウロコ”のものが多くて、本当に参考になるんですよ。特に印象的だったのは、ドイツレストランで出された「桃米とタラのクヌーデル」。桃米とタラのミンチを合わせて焼いたものですが、まるで肉のハンバーグのようなモチモチした食感で、すごく面白いなぁと感動しました。

 中華料理店で食べた「桃米入りおこげの五目あんかけ」もおいしかったし、イタリアンのライスサラダもよかったですね。硬めに炊いた桃米をまぜたドレッシングで野菜をあえるのですが、桃米のピンク色がサラダの彩りになって、とてもきれいに仕上がっていました。

 桃米の可能性、ひいては日本の農業の可能性を広げるためにも、この会は続けていきたいですね。農業を始めなければ、こんなにたくさんの出会いもなかったと、つくづく思います。こうした出会いをムダにせず、これからも農業に対して何ができるのか考えていきたいと思っています。

 ●プロフィル

 おおもも・みよこ 新潟県生まれ。情報番組をはじめ、料理、クイズ、バラエティと幅広い分野で司会として活躍。雑穀アドバイザー、野菜ソムリエ、おさかなマイスター・アドバイザーの資格を取得するなど、農業や食育に関心を持つ。2007年より魚沼で古代米作りを始め、「桃米」として販売中。著書に『ちょっと農業してきます』(成美堂出版)、『日本一おいしいお米の食べ方』(中経出版)。オフィシャルブログ「桃の種」http://ameblo.jp/momo-tane/

 ●「大桃美代子の桃米」は1袋(200g)1500円(税込み、送料別)。売り上げの一部は地震復興支援に充てている。

 ●TEL0120・25・9681または以下のHPから。http://www7.ocn.ne.jp/~uokou/momo-mai.html

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