ヘルシートーク:女優・木村文乃さん

2014.01.01 222号 05面

 山田洋次監督が「初めての体験」という映画『小さいおうち』に、試行錯誤しながら体当たりで向き合ったという女優の木村文乃さん。作中では物語の“秘密”を紐解く青年の恋人役として登場します。CMやドラマ、映画でも人気の木村さんは、季節の野菜を料理するのも大好きだそうです。

 ◆ワンシーンに1日をかける山田組の集中力はすごい

 今回、山田洋次監督の作品に初めて参加させていただきました。厳しいと聞いていたので気を引き締めて臨みましたが、現場はとても穏やかな雰囲気でした。

 山田監督は、1日にワンシーンだけを撮るのです。朝から夕方までかけて、たったワンシーンですよ。

 監督はとても穏やかな方ですが、ひとつのシーンにかける集中力がものすごくて、これまでの私の経験とは格段に違いました。常に、日常の暮らしぶりから出てくる面白さを表現することを考えていらっしゃるんです。密度が濃いというのでしょうか。だからロケ中は家に帰ると、どっと疲れていました。でも本当に楽しくて、勉強になりました。

 私は、新しい役に入る時は必ず、自分を壊していく気持ちでいます。毎回いただく役が、そのままの自分ではできない役ばかりなので、自分を壊さないと役になりきれないのです。

 最初に、山田監督は私の役作りのために、ユキ(役名)のバックボーンを話してくださいました。「九州出身で、母親が絵本好きでいつも読んでもらっていた女の子。キュレーターになるために東京に出てきた」と。もちろん、これらは表面には出てこないことですが、「そうか、そんな女の子なんだ」と、監督のイメージに合うように努力しました。彼氏を支えているけれど、それをあまり表には出さない、一歩下がった女の子というのが私が捉えたイメージ。うまく表現できているといいのですが…。

 ◆「家族の秘密」に迫った作品先入観なしで観て、感じてほしい

 作品のストーリーは、戦争直前の昭和時代、赤い屋根の小さい家に女中奉公したタキ(黒木華)が、奉公先の奥さま(松たか子)との生活や奥さまの秘密を、後に自叙伝としてノートに書き記し、それを又甥の健史(妻夫木聡)が紐解いていくというものです。自叙伝の途中でタキは亡くなるのですが、健史にはノートとともに1通の未開封の手紙が残され、その手紙に実は大きな秘密があるのです。

 赤い屋根の小さいおうちは、東宝スタジオの中に作られました。昭和10年代の住宅の資料を基に再現されています。西洋文化と日本文化が混じり合って生まれた昭和モダン。ステンドグラスがはめ込まれた扉や窓、蓄音機、紅茶カップまで、当時の流行が完璧に再現されているんですよ。

 この昭和モダンの映像と、現代のタキ(倍賞千恵子)と又甥の健史のやり取りの映像が交互に現れるのですが、現代の2人の会話は、短くても言葉一つひとつが強烈なインパクトを残してくれます。謎を解いていく過程で、バージニア・リー・バートンの『ちいさいおうち』という絵本が登場するのですが、これは、山田監督の前作『東京家族』にもさりげなく登場しています。そんな演出もおしゃれですよね。

 山田監督はこれまで家族の絆を描き続けてこられましたが、今回は初めて「家族の秘密」に迫るということで、監督にとっても新しい挑戦だったようです。女性なら誰でも一度は感じたことのある、切なさのある映画。今までの山田作品とはちょっと違った愛の話です。先入観なしで観ていただいて、自分なりの感じ方をしていただければうれしいです。

 ◆季節の野菜を楽しんでいます家族でわいわい食べるのが夢

 石川県羽咋市の海岸でのロケもあったのですが、この時は地元のお米がおいしくて感動しました。粒が大きくて粘りがあって、本来のお米の味ってこうなのかなって。3泊のロケで、もちろんいろいろなものを食べたのですが、このお米のおいしさは圧倒的。お米のイメージが変わりましたね。

 お料理は大好きです。私、食べることよりも作る方が好きなんです。高級レストランでおいしいものを食べようとはあまり思いません。でも、作ってあげる相手が現れたら、きっと食べきれないくらいの量を作ると思います(笑)。大皿の料理をたくさん作って、家族でわいわい言いながら取り分けて食べるのが将来の夢なんです。

 料理を作るのにかける時間は、1品15分くらい。いろんなものをちゃっちゃっと作ります。ごぼうでもにんじんでも、皮をつけたまま。その方が野菜の味がしますよね。あと、季節のものを食べるよう心がけています。これは親から教わったことです。

 いまの季節だと鍋かな。昨日は「しょうが鍋」を作りました。しょうがを半分すりおろして鍋に入れて、残りの半分は針しょうがにします。つみれ、白菜、きのこ類を入れて、ほうれん草も忘れずに。お鍋のほうれん草はおいしいですよね。それから、ハナビラタケというきのこがあるんですが、これは独特の食感で、私の大好きな食材です。

 ●プロフィール

 きむら・ふみの 1987年東京都出身。2006年映画『アダン』のヒロイン、アダン役でデビュー。以来、若手人気女優としてTVドラマや映画にひっぱりだこ。2013年は、JR東日本のCM「行くぜ、東北。」シリーズでも話題に。趣味は映画鑑賞、写真、散歩。特技は、乗馬、スキー、剣道(初段)。最近はバラエティにも出演、人気を博している。

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 ◆山田洋次監督作品『小さいおうち』(松竹)2014年1月25日(土)全国ロードショー

 URL http://www.chiisai-ouchi.jp/

 監督:山田洋次、原作:中島京子「小さいおうち』(文春文庫刊)、脚本:山田洋次・平松恵美子、音楽:久石譲、撮影:近森眞史、美術:出川三男・須江大輔

 出演:松たか子、倍賞千恵子、黒木華、妻夫木聡、木村文乃ほか