ボニッシモ!イタリアの毎日ごはん 先生はオリーブオイル上手
みんなが大好きなイタリアン。買い置きのトマトホール缶や季節の野菜で、おいしいソースを作りましょう。
◆食材のもつ力強さを感じて:イタリア各地で「おいしいもの」修行
郷土料理研究家・こいけ けいこさん
「食紀行クッキング」として、旅した国や地域の郷土料理を教えているこいけけいこさん。なかでも1年ほど料理留学したイタリアは一番好きな国。なぜなら、どこよりもおいしいものがたくさんあるからだそう。南北に細長~い国、イタリア。各地の郷土料理のエッセンスを教えていただきましょう。
●オリーブオイルとの衝撃的な出会い
初めてイタリアを旅して、トスカーナの農家で搾りたてのオリーブオイルをパンに塗って食べた時のおいしさといったら!
オリーブオイルはオリーブの果実を搾ったジュースであり、その搾りたてのフレッシュな香りと味に魅力があることを知りました。これがイタリア料理の大事な調味料だと実感したんです。
そこから私の「イタリア料理」という食文化を体験する修行の旅は始まりました。
●チーズたっぷりのニョッキに感動
最初の修行は、北イタリア・フリウリ州のポルデノーネという小さな町。料理家のシルバーナ先生の山小屋リストランテで学びました。絶妙だったのが、まかないに食べた「チーズたっぷりのじゃがいものニョッキ」。おろしたてのチーズとトマトソースが絡まり、山小屋の寒さも吹き飛ぶおいしさでした。たっぷりふったチーズは、イタリア料理に欠かせない調味料です。
雪が深くなると村に戻り、先生の自宅に住み込んで料理教室を手伝いました。そこでの昼食が「ペンネアラビアータ」。ご存知、ペンの形をしたショートパスタに辛いトマトソースのシンプルな料理です。これがなんと、毎日毎日。はじめは意地悪されているのかな、と疑いました。でも先生はイタリア南部出身で、南の人は特にトマトソースを熱愛していると知りホッとして(笑)。日本人が納豆や卵かけごはんを食べても飽きないのと同じ。そのうち私も、シンプルなトマトソースのパスタが大好きになりました。「アラビアータ」の意味は「おこりんぼう」。カッカすると、そんな顔になりますが、おうちでは辛さは調節して。
先生が時々作ってくれた「ブロッコリーとアンチョビのオレキエッテ」の味も忘れられません。オレキエッテとは小さな耳という意味のショートパスタ。私はこれを見た時、栃木の耳うどんを思い出しました(笑)。このパスタをブロッコリーと一緒に茹で、くたくたにしたブロッコリーのソースであえます。一緒に茹でることで野菜の優しい味わいがする、家庭の知恵が生きた料理です。
●アドレア海近くの町で魚料理を学ぶ
次の修行はアドレア海の近く、中部・マルケ州のポルトレカナーティという町での魚料理。ベアトリーチェシェフから習ったのは「マルケ風ブロデット」という魚介のスープです。その旨みの味わい深いこと!
日本人なら大好きな、和食の旨みに通じる味です。それもそのはず、その時獲れた13種類の魚介を入れるのがルールなのです。家庭料理でここまで魚を入れるのは無理ですが、複数の魚介を入れると滋味深くなるのは確かですね。
ベアトリーチェシェフの作るカルボナーラも絶品でした。生クリームは使わず2種類のベーコンを使うことがポイント。卵のとろみでソースをあえます。これは濃厚な卵をまぜたぶっかけ讃岐うどんだなと思いつつ、おいしさに唸りました。
●日本と共通。素材と料理のおいしさ
ここでイタリアをおおざっぱに日本の地域で例えてみましょう。私はまず、フィレンツェ近くのシエナという町で語学とイタリア料理の基礎を学び、そこから山小屋へ飛んだのですが、これはつまり、イタリア人が羽田に降り立ち、吉祥寺あたりで語学と日本料理を習い、急に岩手の山小屋に飛んで山菜料理を、しかも先生のお宅で田舎料理を学び、次にいわき市の海辺で漁師料理の鍋を習ったという感じでしょうか。
私はその後、ローマなどイタリア中部でも学び、また北部に戻り、イタリア料理には欠かせない「パルミジャーノ・レッジャーノ」を熟成させる生産現場にも出向いたので、これが日本なら福島あたりに戻り、豆腐屋さんで豆腐作りの現場を見学したことになりそうです。
1年間のイタリア料理紀行で感じたのは、その地域に住む人々、料理人、生産者が地域の食材、郷土料理をとても愛していることです。食材の持つ力強さを感じています。素材そのものの味がおいしいので、料理はごくシンプル。南北に細長い国同士、イタリアと日本は料理も共通していますね。
◆ペンネアラビアータ
意味は「おこりんぼ風」。おうちではお好みの辛さで
<材料・2~3人分>
・「ディチェコ ペンネリガーテ」……………180g
・「トップバリュ ホールトマト」……………1/2缶
・にんにく ………………………………………1個
・唐辛子 …………………………………………1~2本
・「ファルキオーニ エキストラバージンオリーブオイル」…大さじ4
・バジル …………………………………………2枚
・塩 ………………………………………………適量
<作り方>
(1)ペンネを茹でる。塩は水に対して1%(分量外)。
(2)フライパンにつぶしたにんにく、唐辛子、オリーブオイルを入れ、弱火で炒める。
(3)ホールトマトを手でつぶしながら加える。
(4)(3)に塩を加え、味を調える。
(5)(4)を(1)のペンネとバジルであえて完成。お好みで粉パセリ(分量外)をふる。
※材料を倍にして、ホールトマト缶を丸ごと使ったアラビアータソースを作り、冷凍しておくのもおすすめ。
○トップバリュホールトマト
400g 88円
イタリア産完熟トマトを、そのまま絞りたてのジュースと一緒にパックしました。
◆ブロッコリーとアンチョビのオレキエッテ
色鮮やかな野菜をやわらかく茹でて、ソースのように使って
<材料・2~3人分>
・ブロッコリー………………………………1/2株
・アンチョビフィレ…………………………2枚
・「ディチェコ オレキエッテ」…………180g
・にんにく……………………………………1片
・「ファルキオーニ エキストラバージンオリーブオイル」……大さじ3
・塩 …………………………………………適量
<作り方>
(1)オレキエッテとブロッコリーを一緒に鍋で茹でる。塩は水に対して1%(分量外)。
(2)フライパンにつぶしたにんにく、オリーブオイルを入れ、弱火で炒める。
(3)(2)がキツネ色になったらアンチョビを加え、(1)の沸騰中の茹で汁を90ml入れる。
(4)(1)のオルキエッテが茹であがったらブロッコリーとともに水を切り、(3)に入れオリーブオイルであえて、塩で味を調える。
○ファルキオーニエキストラバージンオリーブオイル
458g 498円
イタリア産オリーブのみを使用。オリーブオイル特有のフルーティ感と軽い苦み・辛味の調和の良さが特徴です。
●プロフィール
こいけ・けいこ 郷土料理研究家・栄養士 「食紀行クッキング」料理教室主宰
日本や世界各地の「風土と味」に出会う旅を続け、現地の料理を習い、教えることをライフワークとしている。小学校の家庭科講師も務め、子どもたちに料理の楽しさを伝えている。