72候を楽しむ漢方スローライフ(59)東風凍(はるかぜこおり)を解く
暖かな風が吹く春の始まり(立春初候 2月4日~8日頃)
*
春風が吹き、池や湖に張り詰めた氷がとけていく頃。長い冬のトンネルを抜け、ようやく春の兆しが見え始めます。厳しい寒さはまだ続きますが、雪の下からはふきのとうが顔を出し、南方からは梅の便りもちらほら。小さな春の足音に、気持ちが浮き立つ季節です。
●漢方の知恵で花粉症対策
2月に入ると本格的な花粉シーズンの到来です。花粉症は体質を整えれば症状を緩和できるもの。治らないからと諦めず、積極的に対処しましょう。
“全身を一つ”と捉えて対応する中医学(中国の伝統医学)には、「同病異治(どうびょういち)・異病同治(いびょうどうち)」という考え方があります。同病異治は「同じ病気でも原因によって対処が異なる」こと。花粉症も、薄い鼻水が出て寒気がする時は冷えを発散して身体を温める、粘りのある鼻水や目の充血があれば体内の余分な熱をさますなど、症状と原因を見極めて対処することが大切です。
一方、異病同治は「違う病気でも原因が一緒なら対処も同じ」という考え方。花粉症対策は「衛気(身体の免疫力)」を充実させることが基本ですが、これは、風邪や皮膚炎など他のさまざまな病気の対策にもつながります。季節を問わず、日頃から意識して衛気を養うよう心がけましょう。
●胃腸を守って衛気をアップ
衛気は体内の「気(エネルギー)」の一つで、身体の表面をめぐってバリアを張る免疫力のような存在。衛気が充実していれば、花粉やウイルスなどの侵入をブロックできるため、花粉症の症状も起こりにくくなります。発汗をコントロールして体温を調節する働きもあるため、衛気が十分にあれば低体温を防いで免疫力アップにもつながります。
衛気を充実させるポイントは、胃腸の働きを守って十分に栄養を取ること。また小腸は最大の免疫器官でもあるため、免疫力を高めるためには胃腸を健やかに保つことが大切です。
積極的に取りたい食材は、胃腸の働きを良くして気を養う春菊、大根、にんじん、山芋、かぼちゃ、豆類、きのこ類など。
漢方では、衛気を養う『イスクラ衛益顆粒S』、胃腸を元気にする『イスクラ健脾散エキス顆粒』などがよく使われます。
監修:秋本佳媛(中医学講師)
◆ハレの日薬膳レシピ:春菊ときのこのパスタ
衛気を充実させる春菊ときのこを使って
<材料:2人分>
・スパゲッティ(太さ1.6mm)……160g
・春菊…………………………………50g
・しいたけ、エリンギなどお好みのきのこ(あわせて)……120g
・にんにく(みじん切り)…………1片
・唐辛子(種を取り半分に)………1本
・アンチョビフィレ(あらみじん)……4枚
・三つ葉………………………………適量
・オリーブ油…………………………大さじ1と1/2
<作り方>
(1)春菊は3cm長さに、きのこは食べやすい大きさに切る。三つ葉は2cm長さのザク切りに。
(2)たっぷりのお湯に1%の塩(分量外)を加えて沸騰させ、表示より1分短くスパゲッティをゆでる。
(3)フライパンにオリーブ油とにんにくを入れて弱火にかける。にんにくが少し色づいたら、唐辛子とアンチョビ、春菊、きのこを加えて炒める。
(4)きのこに火が通ったら、(2)のゆで汁を大さじ2杯加えて混ぜ、ゆであげたスパゲッティを湯切りして加え、全体をさっとあえる。
(5)皿に盛り付け、三つ葉をのせる。
(レシピ担当:鈴木理恵(国際薬膳師、管理栄養士))
●季節のオススメドリンク:シベリア霊芝茶
ロシア・シベリア地方のシラカバに生えるきのこ「チャガ」のお茶
●気のめぐりを促し、胃腸の働きを良くします。
24節気72候は、古代中国で始まった暦が日本でも取り入れられ、風土気候に合わせ明治まで使われていました。日々の中に少しずつ感じられる季節の移ろいを、楽しみましょう。