ヘルシートーク:「noma」ヘッドシェフ兼創設者 レネ・レゼピさん

2015.04.01 237号 05面

 「ワールド50ベストレストラン」で4回も1位を獲得した「noma(ノマ)」が、日本に期間限定のレストランをオープン。わずか3,600の席をめぐり58,000件の予約が殺到し、グルメ界は大騒ぎに。「noma 東京」を大成功のうちに終了した翌日、服部栄養専門学校で料理講習会を行ったシェフのレネ・レゼピ氏のお話を紹介します。

 ●人を喜ばせるには「おもてなしの心」 料理のストーリーを楽しもう

 世界一の評価を何度もいただいていることには、とても感謝しています。でも、私は自分の料理が世界一とは思っていません。食べ物のような主観的なものでランキングするということが馬鹿げている。それは、世界中でどの「色」が一番素晴らしいかをランキングしているようなものでしょう?

 ランキングは毎年変わります。だから私は、世界ランキングで1位になるために料理をしているわけではなく、私の周囲が幸せになること、それが私の目指す成功です。

 人を喜ばせるためには、「風味・フレーバー」「おもてなしの気持ち」が大切です。デンマークのレストランでも、ただ黙って食事をしているカップルを見かけることがありますが、寂しいですね。レストランは、ただおいしければいいのではありません。「ようこそ」という気持ちでお客さまを迎え、リラックスしていただき、そしてサプライズを提供する。このサプライズが、お客さまを喜ばせる最も重要な要素ではないでしょうか。

 日本はいいですね。1年中、季節に応じて料理に哲学的な意味づけができます。つまり料理にストーリーがあるわけです。出会ったみなさんはとても協力的でした。友人のシェフが全国のシェフに連絡を取り、生産者の情報を提供してくれました。「noma 東京」を実現することの意義と私の真剣な気持ちをみなが理解し、協力してくれました。これはお金で買えるものではありません。日本を選んで本当に良かったと思っています。

 ●日本とデンマークの融合にトライ 食材探しで列島縦断

 今回の期間限定「noma東京」は、コペンハーゲンの店を休み、77人のスタッフ全員を連れてやってきました。ただし、日本のお客さまにコペンハーゲン「noma」の料理を食べていただくつもりはありませんでした。日本の食材を使い、デンマークの「noma」のやり方で、料理を提供しました。それがどんな融合をするのか、トライしてみたんです。

 まず、青森から沖縄の石垣島まで、日本列島縦断で食材探しの旅をして、研究を重ねてきました。日本の食材の本もたくさん読みました。「おもてなし」や寿司の本もね。それらが私の中に積み重なって、表現されたのが今回の「noma東京」の料理です。

 日本に来ることは、私にとっては月に行く感じでした。すべてが違う。例えば、かぶ一つ、いちご一つ買うのでも、デンマークならマーケットでお金を払いさえすればいい。でも日本では、生産者のところで毎日毎日、かぶのみそ汁を飲んで関係をつくることから始めなければなりませんでした。いちごを買う時には、おもちを食べながら7時間かけて交渉。生産者との関係をつくることから始めることが大切だということを学びました。

 難しい挑戦であることは最初から分かっていたので、スタッフにも「大変だぞ」と告げました。でも、日本でやることが新しい経験になり、そこから力を得ることができると信じていました。結果は大成功。「noma東京」最終日のビッグパーティーでは、スタッフ全員、泣いていました。

 ●日本の農産物の素晴らしさに感動 農家が心を砕いてこその食材

 日本の食材でどれが一番というのは決められないなぁ。青森では、馬肉が素晴らしかったですね。東京の人は食べていないとか。そのことに驚きました。すごくおいしいのに、もったいない。

 九州で見つけたのは、むかご。「noma東京」でも使いましたが、これも素晴らしい材料でした。石垣島では食用の花ですね、特にトロピカルフルーツの食用花。

 日本の食材は素晴らしいと思います。デンマークとでは、農業のやり方自体から違います。デンマークの農家は60ヘクタールの農場をスタッフ5人で運営していますが、日本では2ヘクタールの農場に60人が働いています。手をかける時間が違うし、心の砕き方が違う。そこが日本の農作物の素晴らしさではないでしょうか。

 食材探しの旅、「noma東京」の実現。今回の体験は、私の人生を変える大きな出来事でした。最後に一言言わせてください。We will be back!(私たちは必ず戻ってきます!)

 ●プロフィール

 Rene Redzepi(レネ・レゼピ) フランス料理の学校で「人を喜ばせる料理」をつくるという課題に取り組んだことから、料理に目覚める。各地のレストランを経て、1998年、エルブリにて修行。新しい料理の世界を目指す。2003年、デンマークのコペンハーゲンに「noma」をオープン。2010年より3年間「ワールド50 ベストレストラン」1位に選ばれ、2013年に2位、2014年に再び1位に返り咲いた。

 ●「noma 東京」で今回使われた食材

 熟していないいちご、大麦の麹、酒粕、酒、かぼすの果汁、白みそ、すだち、ゆず、ボタンエビ、蟻、はっさく、文旦、バンペイユ、みかん、利尻昆布、白ごま油、ひばぁち、山椒、あんこうの肝、乾燥した稲わら、羅臼昆布の塩、イカ、イカワタ、みそで漬けた燻製豆腐、まいたけペースト、ローズの花びら、しじみ、サルナシ(またたびの一種)、コブミカン、羅臼昆布オイル、わさび、豆乳、にがり、くるみ、乾燥したホタテ、ブナの実、かぼちゃ、かつおぶし、塩漬け桜の花びら、ウワズミザクラの樹皮、黒にんにく、たまご、幼虫、むかご、れんこん、くわい、ちょろぎ、みそ、みりん、しょうゆ、米酢、しょうが、黒すぐりの樹皮、野生の鴨、セップ茸、椎茸、ぶどう、かぶ、椎茸原木のチップ、酵母、スイバ、米、人参芋(さつまいもの一種)、白下糖、レモン果汁、甘草シロップ、ゼラニウム、ニワトコ、白樺樹液、ニッキの根