ヘルシートーク:俳優・阿部サダヲさん

2016.05.01 250号 05面
(c)2016「殿、利息でござる!」製作委員会

(c)2016「殿、利息でござる!」製作委員会

 独特かつ痛快な演技で観客を楽しませてくれる阿部サダヲさん。『奇跡のリンゴ』に続く中村義洋監督作品2作目となる本作では、町を救うために奔走する身の程知らずのまっすぐな男、穀田屋十三郎を演じています。作品の見どころや、撮影中のエピソードについて伺いました。

 ●僕の目ヂカラを観てください!まっすぐ過ぎて笑える男をめざしました

 この作品、実は“実話”なんです。貧しい町を救おうと立ち上がった、吉岡宿の庶民の姿がとてもかっこいい感動の歴史秘話なのですが、自らつくった「つつしみの掟」によって、自分たちの行いを子孫の代に至るまで口外しませんでした。無償でお金を集めて町の存続のために私財を投じるという、無私の精神や慎みの考え方が本当に素晴らしい。昔の日本人にあった“いいところ”を観ていただきたいですね。

 僕が演じた十三郎は、まっすぐで愚直な男。時代劇ということもあり、役づくりには黒澤明監督の映画を参考にしました。中村監督からは「志村喬の目をして」と言われていたので、目を“ガッ”と見開いているシーンが多いと思います。僕が登場するシーンが撮影初日だったのですが、代官に直訴するシーンがありました。緊迫感あるシーンなので、監督に「“死んでもいい”という気持ちで向かってください」と言われ、まっすぐにぶつかっていきました。でも、痛快なエンターテインメントでもあるので、十三郎のまっすぐ過ぎて逆に笑えるような姿をめざして演じました。

 ●一つのシーンに、とことんこだわる 朝まで及んだ撮影も

 撮影は昨年の夏、山形にある「庄内映画村」で行われました。山を切り拓いて映画のセットがつくられている場所で、過去に『十三人の刺客』などの撮影も行われたそうです。手でつかめるくらいクワガタがビュンビュン飛んでいる野生的なロケーションの中に、地元のエキストラの方や、これまた地元の気性の荒い馬もいました。瑛太くんは、馬と一緒のお芝居があったので、いつも「大丈夫かな」と心配していましたね。

 撮影は夜通し行われることもありました。特に竹内結子さんが演じる、ときさんの飯屋でのシーンは、夜のシーンでも照明を工夫しながら、朝まで粘ることが多かったですね。中村監督はいい芝居を撮るために、何回もテイクを重ねるんですが、僕は監督を信頼していたので、何回撮っても、朝まで続いてもまったく苦ではありませんでした。僕は、中村監督や原作者の磯田道史さんと同い年なのですが、どう生きてきたらこんなにも違う人間になるんだろうって本当に不思議でしたね(笑)。

 ●フルーツやかき氷が猛暑を和らげてくれた 出演者と飲みにでかけたことも

 ときさんが営む飯屋では、みんながお酒を酌み交わすシーンも多くあります。昔はこういう場が地元の人の社交場だったんでしょうね。いまではSNSでやりとりされるような、ご近所話や愚痴を肴にして酒を飲む。いい時代ですよね。

 お酒といえば、きたろうさんが朝、撮影現場に来るといきなり「今日、何時に終わる?」って聞くんですよ。唯一、監督を急かす存在! もうお酒を飲みたくて仕方ないんでしょうね。きたろうさんが演じる十兵衛の登場シーンは茶畑なのですが、宮城まで移動して撮影しました。その帰りのバスの中でも、きたろうさんがウイスキーを開けていて(笑)。中村監督もお酒がとてもお好きだし、山形は日本酒がおいしいから、撮影中は出演者と一緒によく飲みに出かけました。飲み過ぎないように、店に入ってすぐに5リットルの水を頼むことが僕らの間の流行りでした。

 僕の撮影中のマイブームは、プチ断食や、散歩の途中で見つけたおがくず酵素風呂。山形ではとても有名なようです。発汗作用がすごくてデトックスにもなるので、2~3kg痩せました。撮影の合間にボランティアの方たちがかき氷を差し入れてくれたのですが、マンゴー、あんこ、練乳などトッピングも豪華でおいしかった!

 ラフランスや庄内メロンの差し入れも、真夏の撮影の癒やしになりました。

 自宅では自分でも料理をしますが、妻がつくるサラダが大好きです。きたろうさんに勧めていただいたお取り寄せの野菜がおいしくて、最近は野菜をよく食べています。ゆでたネギやロマネスコが最近のお気に入りですね。

 ●プロフィール

 あべ・さだを 1970年千葉県生まれ。92年より大人計画に参加。映画、ドラマ、音楽と幅広く活動。07年、映画『舞妓Haaaan!!!』で初主演を果たし、第31 回日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞。近年の主な出演作に『謝罪の王様』『寄生獣』(ミギー役=声の出演)『ジヌよさらば~かむろば村へ~』などがある。

 (写真:ヘアメイク/荒川英亮スタイリスト/チヨ(コラソン)衣装協力/TONORISOOK)

 ◆Movie information

 『殿、利息でござる!』5月14日(土)~ 松竹系全国ロードショー

 ○Story

 ビンボー庶民がお上を相手に一世一代の大勝負!宿場町・吉岡宿は金欠の仙台藩による容赦のない重税に破たん寸前。宿場復興のために知恵者の篤平治が思いついたのが、藩に大金を貸し付け、利息を巻き上げる「庶民がお上から年貢を取り戻す」というアイデアだった。いまから250年前の江戸時代に実在した人々の、現代を生きる私たちにも通ずるヒントたっぷりの奇跡と感動の歴史秘話を映画化。

 原作:磯田道史『無私の日本人』所収 「穀田屋十三郎」(文春文庫刊)

 監督:中村義洋

 脚本:中村義洋 鈴木謙一

 出演:阿部サダヲ 瑛太 妻夫木聡 竹内結子ほか

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